2024年7月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年6月19日

 英セントアンドリュース大学戦略研究教授のフィリップス・オブライエンが、2024年5月23日付のウォール・ストリート・ジャーナルに、ウクライナがきちんと防衛できるようにしてやるべきであるとの論説を書いている。

(Anton Petrus/gettyimages)

 バイデン政権のウクライナ戦略は、一方で支援しながら同時にブレーキをかけるというものだ。ウクライナが攻撃して良いものと良くないものを管理することで、米国は戦争を必要以上に長びかせ破壊的なものにしている。

 バイデン政権が恐れているのは、ウクライナが米国製ミサイルやドローン等でロシア領内を叩けば、プーチンが事態をエスカレーションさせるということだ。プーチンは、もしウクライナがレッドラインを越えたら核戦争が起こると脅す。しかし、彼は常に引き下がってきた。

 ロシアはウクライナの如何なる標的も攻撃することが可能だが、ウクライナはそれがロシア領内にある限り、米国製兵器でやり返すことができない。ロシアが地上軍の進軍を進める際、領土が攻撃されない事は大きな利点だ。

 米国はロシアに大きな戦略的聖域を提供している。ロシアは国境防衛の心配なく戦えるが、ウクライナは領土内でのみ戦わなければならない。

 この戦略は馬鹿げている。ロシアによるエスカレーションの脅しは虚偽であることが繰り返し示されてきた。それは次のようなパターンをとる。

 米国が、一定のラインを超えるとロシアのエスカレーションにつながり核兵器使用にさえ踏み切りかねないと判断する。するとウクライナは幾つかの兵器システムが使用できなくなる。それは当初HIMARS、次にM1 Abram戦車、そしてATACMS、F-16戦闘機という具合だ。

 ところが欧州が米国と同様の兵器を供与し、あるいはウクライナが負けそうになると、バイデン政権は考えなおし、兵器システムを供与する。するとしばしば大きな成果があがるが、ロシアのエスカレーションは起こらない。そうなると今後はロシアが新たな兵器システムを使用するようになり、また同じサイクルがスタートする。

 戦争開始から最初の2年間、米国はクリミアに到達する兵器を何ら供与しなかった。それは米国製兵器を使ったクリミア攻撃はロシアのエスカレーションを誘発しかねないという考えがあったからだ。


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