2024年12月15日(日)

プーチンのロシア

2024年6月18日

 ロシアのプーチン大統領が、間もなく訪朝に踏み切る。経済面では命綱である対中貿易を米国の制裁で抑制され、主要7カ国首脳会議(G7サミット)では一層のウクライナ支援が打ち出されるなか、ロシアは北朝鮮への接近を通じ、対抗姿勢を示す構えだ。北朝鮮による軍事協力でウクライナ侵攻を長期化させ、北のミサイル開発を支援することで北東アジアの不安定化を引き起こし、欧米や日本などを恫喝する戦略といえる。

接近を強めるロシアと北朝鮮だが、それは、プーチンの厳しい状況を物語っている側面もある(代表撮影/ロイター/アフロ)

 第二次世界大戦後、北朝鮮の生みの親であった旧ソ連の首脳は北指導部への不信感から、誰一人訪朝することはなかったとされる。その前例を2000年に打ち破ったプーチン氏は、国際社会を翻弄する〝カード〟として北朝鮮との接近を利用する姿勢を鮮明にしている。ただロシアと北朝鮮を結ぶのは、打算ともいえる利害関係だけで、プーチン氏の姿勢には危うさもつきまとう。

弾薬が続々と

 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が訪露する直前の昨年9月7日。米国の民間衛星会社は、弾薬を詰め込んだ約1000個のコンテナが北朝鮮からロシアに運び込まれ、さらにその一部がロシアのウクライナ国境から約200キロの弾薬庫に運び込まれた様子を捉えていた。

 このような輸送は8月下旬以降、繰り返し行われていたという。あたかも、金氏の訪露に先駆けた〝儀礼〟ともいえる光景だった。

 北朝鮮から輸送された弾薬は、前線で疲弊するロシア軍を確実に助けているようだ。米国防総省傘下の国防情報局(DIA)は今年5月末、ロシアがウクライナ東部ハリコフの再攻撃を図った際に使用した短距離弾道ミサイルが北朝鮮製だったと報告した。北朝鮮はロシアに対し、数百万発の砲弾を提供したとみられている。

 惜しみなく砲弾を提供した北朝鮮に対し、ロシアは最大限の〝厚遇〟で答えている。昨年9月13日にプーチン氏は、ロシア極東のバイコヌール宇宙基地で訪露した金氏をもてなし、さらにロケット発射台などを紹介してみせた。

 金氏はコムソモリスク・ナ・アムーレでは、戦闘機「スホイ35」「同57」の組み立て工場を見学。その後も北朝鮮が欲しているであろうロシアの軍事関連工場、また軍関連施設が、次々にロシア側から紹介された。

 それから約8カ月後の今年5月、北朝鮮は新型エンジンを搭載した軍事偵察衛星の打ち上げに踏み切る。新エンジンは成功せず、打ち上げは失敗に終わったが、周辺諸国は驚きを隠せなかった。

 新型エンジンは、ロシアなどが大型ロケットに使用していると思われる種類の燃料を使用したエンジンとみられているからだ。ロシアから技術供与を受けた可能性が高い。


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