2024年6月30日(日)

BBC News

2024年6月27日

イギリスのリシ・スーナク首相と最大野党・労働党党首のサー・キア・スターマーは26日、7月4日の総選挙に向けた最後のテレビ討論会に臨んだ。討論では税金や移民、ジェンダー、ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)などが争点となった。

BBCがノッティンガム・トレント大学で主催したこの討論会で、保守党党首のスーナク氏はサー・キアに対し、労働党は増税を計画しており、不法移民対策がないと繰り返し批判した。

一方のサー・キアは、絶えず話をさえぎるスーナク氏を叱責したほか、スーナク氏が財源のない税制改革を約束し、有権者の様子が「まったくわかっていない、ずれている」と反論した。

両党首は、会場に集まった一般市民からの質問内容を事前に知らされていなかった。市民の1人が2人に対し、「あなたたち2人は本当に、この偉大な国の首相として、私たちに与えられた最善の選択肢なんですか?」と尋ねる場面もあった。

保守党では最近、立候補者を含む関係者が、総選挙の時期を賭けの対象にしていた疑惑が次々と明るみになっている。サー・キアは、スーナク氏がこれらの対応を「いやいやさせられている」と非難し、先制攻撃に出た。

これに対しスーナク氏は、「私にとって重要なのは、問題の重大性と機密性を考慮し、適切に対処することだったし、そうしてきた」と返した。

税金をめぐり応酬

世論調査は、来週の選挙で労働党の勝利を予想している。スーナク氏にとってはこの討論会が、投票日前に事態を挽回する最後のチャンスだったかもしれない。

スーナク氏は、選挙戦序盤に行われた最初の討論会と同様、税金についてサー・キアを攻撃しようとした。

特に、英紙デイリー・テレグラフのインタビューで、労働党のダレン・ジョーンズ影の財務首席政務次官が、温室効果ガスの実質的な排出量をゼロにするいわゆる「ネットゼロ」には数百億ポンドの費用がかかると述べた点を取り上げ、「これは数千ポンドの増税になる」と指摘した。

サー・キアはこれについて、政府が支出を約束した資金に「投資家を参加させるのはまったく正しい」と述べた。

BBCヴェリファイ(検証チーム)によると、保守党も労働党も、2050年までのネットゼロ達成を目標に掲げている。また、達成に向けたコストの大半は、政府支出ではなく民間投資で賄われる見込み。

なお、デイリー・テレグラフが公表したインタビューの録音では、ジョーンズ氏は政府の直接支出とは特定せずに発言していた。

スーナク氏はまた、将来の労働党政権下では「国民年金は退職税の対象となる」と集まった聴衆に語った。

これについても、BBCヴェリファイが検証しており、保守党の計画でも国民年金は課税対象になる見込みだが、保守党は年金生活者をこの計画から除外するとしている。

労働党は同様の政策を示していないが、労働党案はそもそも退職税とは異なる。

サー・キアは、最初の討論会よりも攻撃的な態度で応じ、首相が聴衆に「少なくとも2000ポンド以上の税金を支払う余裕がありますか?」と尋ねたのに対し、スーナク氏が「うそを繰り返している」と非難した。

ブレグジットと不法移民

また、両党首はブレグジットについても質問された。会場にいた中小企業経営者は、欧州連合(EU)との貿易改善のために何をするつもりなのかを尋ねた。

スーナク氏はEUと新たな貿易協定を結ぶには、「バックドア(裏口)による自由な移動」を認めるしかないと述べた。

サー・キアは、「我々はEUに戻らない。単一市場や関税同盟にも再加入しない。また、人の移動の自由も受け入れない」と述べ、拍手を受けた。

そのうえで、「私たちは、失敗に終わったこれまでの協定よりも良い協定を締結できると確信している。私はそのための戦いに挑む」と付け加えた。

一方で、スーナク氏が発言機会を独占し、不法移民や小型ボートの入国阻止に関する労働党党首の姿勢を問いただす場面もあった。

サー・キアはスーナク氏の、一部の亡命希望者をルワンダに移送する計画に異議を唱えたが、首相が「ではあなたなら、その人たちをどうするつもりか」と繰り返し尋ねたため、サー・キアの発言はかき消されてしまった。

スーナク氏はさらに、サー・キアはイギリスでの難民申請を拒否された人々を、アフガニスタンで政権を握る武装組織タリバンの元に送り戻す取引を計画しているのか、と尋ねた。

両党首は共に、「ジェンダー認定証明書(GRC)を持っているかどうかに関わらず、いかなるもしくはすべての男性に対して、女性が女性専用の空間で過ごす権利を守るか」という質問について、女性の権利を守ると約束した。

サー・キアはさらに、「自分が認識していない性別で生まれてくる人は少数ながら存在する」と付け加え、「その人々に対しても、他のすべての人と同じように、尊厳と敬意を持って接していく」と述べ、喝采を浴びた。

サー・キアはまた、イングランドとウェールズの検察トップ、公訴局長を務めた自身の経歴と「労働者階級」の出身を繰り返し話題にし、スーナク氏が現実世界の問題を知らない浮世離れした存在だと、批判しようとした。

サー・キアが、福祉給付に関してスーナク氏が有権者のおかれてる状況を知らずに「ずれている」と非難すると、スタジオの聴衆から拍手が起こった。

サー・キアは、人々を再び仕事に就かせるための計画の概要を説明し、スーナク氏に対して「もし、この会場や全国の人たちの声をもっと頻繁に聞いていれば、これほど国民の実情がわからず、ずれてしまっていることにはならなかったはず」だと述べた。

(英語記事 Sunak and Starmer clash in final election debate

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cydvp398n7eo


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