2024年11月21日(木)

安保激変

2013年12月12日

不快感を示す米国
激怒するオバマ

 今回の中国政府の動きは、米国でアジア政策に携わる人間の間では、「尖閣諸島問題で日本と対等な立場にたって領有権を主張する」ことを目的としたものではないか、という見方が大勢を占めている。しかし、その文脈で見てもADIZ設定という行為は中国が一方的に緊張を高める行為に出たものだ、という見方でほぼ一致している。

 また、今回の中国政府による措置は、中国政府の意図はどこにあるにせよ、実質的に西太平洋地域でアメリカが第二次世界大戦後築いてきた国際環境への明示的な挑戦として、米国は受け止めている。米国、特に国防省や軍の関係者の間には、中国が今回のような措置を黄海や南シナ海にまで広げるのではないかという懸念が確実に存在する。中国政府からの発表後、すぐに米軍がB-52爆撃機を中国が設定したADIZの中で飛行させ、中国側がこれに対して緊急発進などの措置を取らなかったことを公表した。通常、自軍の行動や、それに対する相手国の行動について、このような発表をわざわざすることは極めて稀だ。米国の不快感をはっきりと表した行為である。

 さらに、この中国政府の突然の発表にオバマ大統領は激怒していると言われている。今年6月にカリフォルニア州サニーランドで習近平主席と初の米中首脳会談を行った際に、オバマ大統領からは、今後の米中関係において何よりもオバマ大統領が重視するのは、中国からの「サプライズ」がないことであると強調したと伝えられる。中国からADIZ設定発表前に米国に事前通報した形跡はなく、「サプライズ」以外のなにものでもない。今回の件を契機にオバマ大統領が習近平主席を「ビジネスができない相手」として見始めることは確実だ。

 しかも、今回の中国政府による発表は、そのわずか2日前の11月21日にスーザン・ライス国家安全保障大統領補佐官がジョージタウン大学で行ったアジア政策に関する演説の中で「中国とは新しい大国同士の関係を実行に移すための協議をしていく」と語った直後の発表である。オバマ大統領が政権の面子を潰されたと感じてもおかしくない。

中国がこれ以上挑戦的な行動に出ないために

 その一方、一度設定してしまったADIZを撤回させることはほぼ不可能であろう、という点についても米国内では意見がある程度の一致を見ている。であれば、ADIZ設置を既成事実に仕立て上げて中国がこれ以上挑戦的な行動に出ないために米国は何をするべきなのか――米国の関心事は今や、この一点にあると言ってよい。


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