2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2024年7月10日

 少子高齢化が進み、日本の生産年齢人口(15歳~64歳・労働の中核)が減少しています。

 総務省が2022年に発表したデータによると、2050年には生産年齢人口が2021年より29.2%減少する見込みで、労働力不足だけでなく、さまざまな社会的・経済的課題の深刻化が懸念されています。この国家的な問題の経緯や原因はどこにあるのか、そして人材不足解消に向け、日本の各種産業ではどのような取り組みを行っているのでしょうか。 

 国内産業の問題を提起する人気記事の中から、<労働人材不足>をテーマにした8本を編集部が厳選してお届けします。

(Hananeko_Studio/shutterstock)

<目次>

1:<人手不足はいつから始まった?>職業別ギャップや最終学歴データから人手不足の原因を探る(2023年7月6日)

2:<科学技術立国・日本の面影はどこに>ノーベル賞受賞者数は多いのに博士号取得者減少が止まらない理由(2023年3月4日)

3:【世界が注目する無人運航船】海事産業の人手不足に挑む省力化と技術革新プロジェクトとは(2023年11月24日)

4:<増員だけで“いい介護”は生まれない>介護・看護に正のスパイラルをつくる『介護リテラシー』とは(2022年3月16日)

5:<報酬引き上げでも働き方改革でもない>医師不足解消のための根本的な解決策とは(2024年1月9日)

6:【最強ホワイトハッカー集団の正体】トップレベルの人材を育成する高専が日本企業のセキュリティーを守る(2021年11月6日)

7:<世界が欲しがる『KOSEN』>科学技術立国復活のために再考すべき高専人材の価値(2022年11月18日)

8:【脱・人口減決定論】人手不足は少子高齢化のせいではない 真犯人はいったい誰なのか?(2024年2月28日)

1:<人手不足はいつから始まった?>職業別ギャップや最終学歴データから人手不足の原因を探る(2023年7月6日)

(tadamichi/gettyimages)

 人手不足が深刻だ。コロナ禍では医療従事者や介護職員ら「エッセンシャルワーカー」が取り沙汰され、最近では需要が高まる観光事業者や飲食店などのサービス業で見受けられている。しかし、人手不足は昨日今日の話ではない。その経緯を紐解くとともに、原因を探っていきたい。

 求職者1人当たりの求人倍率を有効求人倍率といい、1を超えると求人数が求職者数を上回り、この数値が大きいほど人手不足が深刻なことを示す。図1をみるとわかるように、人手不足が目立ってきたのは2010年代の半ばころからである。

 有効求人倍率は元々景気動向指数の一致系列で、求人と求職が均衡する1.0を軸に、景気後退期に下降し、回復期には上昇する形で変動してきた。こうした循環運動とは別の、例えれば地殻変動のような動きがあったのが2010年代だ。この頃に何が起きていたのか――。

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人手不足はなぜ起きるか 本質は学歴と適性のミスマッチ

2:<科学技術立国・日本の面影はどこに>ノーベル賞受賞者数は多いのに博士号取得者減少が止まらない理由(2023年3月4日)

(MAXIM ZHURAVLEV/gettyimages)

 日本が科学技術立国として生き延びられるか、大きな曲がり角を迎えている。日本の科学技術力の相対的地位が低下する中、それを支える若手博士は減少し、苦境にあえいでいるからだ。

 こうした現状は以前から指摘され続けてきたが、状況は一向に改善せず、むしろ悪化している。若手研究者を大事にしない、博士の魅力を高められないなど「博士を有効に活用する政策」の失敗といえるだろう。若手研究者を惹きつける〝異次元の支援策と教育〟が、いま求められている。

 文部科学省科学技術・学術政策研究所が、今年1月末に発表した、博士課程進学に関する実態調査は、科学技術立国の屋台骨を揺るがす衝撃的な内容だ。

 2021年度に薬学、医学など6年制を含む、すべての大学院修士課程修了者12万5028人を対象に、22年1月16日~3月8日に、進路選択とその理由などについてアンケート調査を実施、1万7525人の回答を分析した――。

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「科学技術立国」生き残れるか テコ入れ急務の博士活用政策

3:【世界が注目する無人運航船】海事産業の人手不足に挑む省力化と技術革新プロジェクトとは(2023年11月24日)

「MEGURI2040」で無人運航の監視と遠隔操船の実証実験のため東京港を出港するコンテナ船「すざく」(2022年2月)(THE NIPPON FOUNDATION)

 山陽新幹線徳山駅のプラットホームからは、すぐ目の前に各種の貨物船が停泊しているのが見える。ここに拠点を置く「イコーズ」(山口県周南市)は、まさに新規人材の登用・育成と、省力化を同時に進めている。同社は、2000年に5人の船主が共同して立ち上げた船舶管理会社だ。個別に所有する船舶や船員を運用するのではなく、共同して運用することで効率化を進め、スケールメリットの発揮を目指し、現在では18隻の船と約140人の船員を運用している。

 「船員の有効求人倍率は3倍を超えている。看護師やトラックドライバーなど人手不足が問題となっている業界よりもさらに深刻な状況にある」と、イコーズの畝河内毅社長は危機感を強めている。13年には海洋共育センターを立ち上げ、6級海技士養成の支援を始めた。実習に使用する船は船主が個別に提供する。これほどの協力体制を敷くのは「行政が運営する学校の卒業生だけでは船員を確保することができない」(同)からだ――。

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省力化と技術革新の両輪で 人手不足の解消に挑む

4:<増員だけで“いい介護”は生まれない>介護・看護に正のスパイラルをつくる『介護リテラシー』とは(2022年3月16日)

(Pornpak Khunatorn/gettyimages)

 高齢化が進む中、介護業界の人手不足が懸念されて久しい。2021年に厚生労働省が公表した介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数によると、25年度には約32万人、40年度には約69万人の追加確保が必要だという。

 国は増員のための施策に力を入れているが、果たして多くの人材が確保されれば介護にまつわる諸問題はすべて解決するのだろうか?

 在宅介護、看取りについての連載2回目の今回は、社会や個人にとって「いい介護」をつくるためにできることを考えていく。

 筆者が介護サービス利用者の立場から疑問を持った発端は、介護が必要な両親と離れて暮らす遠隔介護の経験による。訪問介護・訪問看護・訪問リハビリを利用し、昨年末には父を在宅で看取ったのだが、数年前からのこの流れの中でもっとも苦労したのは、親と介護関係者との信頼関係づくりだった――。

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人員増でない介護・看護を充実させる新たな処方箋

5:<報酬引き上げでも働き方改革でもない>医師不足解消のための根本的な解決策とは(2024年1月9日)

(Akarawut Lohacharoenvanich/gettyimages)

 2023年の年末は、医療、介護、障害福祉の診療やサービスの対価となる診療報酬改定への議論が大詰めを迎えていた。診療報酬は2年に1度、介護報酬および障害福祉サービス等報酬は3年に1度改定が行われており、今回は6年に1度の同時改定。報酬を引き下げたい国と医師会との攻防が繰り広げられた――。

 診療報酬を引き下げたい国に対し、日本医師会の松本吉郎会長は11月29日の定例会見で、「物価高騰、賃金上昇の中で安全かつ質の高い医療・介護を安定的に提供するには医療介護従事者への賃上げを行い、人材を確保することが不可欠だ」と語り、改めて「診療報酬の思い切ったプラス改定しかそれを成し得ない」と強調していた。

 結局、24年度の診療報酬は、医療従事者の人件費部分を0.88%引き上げる一方、医薬品の公定価格の薬価は引き下げ、全体で0.12%のマイナス改定となった(「来年度の診療報酬改定 人件費など引き上げも薬価は引き下げ」2023年12月20日 NHKニュース)。本体のプラス改定により、薬価の引き下げに伴う保険料や医療にかかる税金の軽減効果は打ち消される――。

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医師不足解消は報酬ではなく周辺業務の開放しかない

6:【最強ホワイトハッカー集団の正体】トップレベルの人材を育成する高専が日本企業のセキュリティーを守る(2021年11月6日)

木更津高専(高専提供)

 日本は今、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進のうねりの中にある。競争力の強化、企業変革の手段としてのIT活用は以前から叫ばれてきたが、コロナ禍で否応なしにオンライン上のやり取りが増えた。一方で、サイバー攻撃の手口は年々、巧妙化し、愉快犯から確信犯へ、また標的型による特定対象を狙った攻撃が増加している。

 セキュリティー対策の重要性が一層高まる中、セキュリティー人材育成の一環として開催されるコンテストにも熱い視線が注がれている。2017年に開催された「第12回情報危機管理コンテスト」では、あるチームが関係者をざわつかせた。初出場で経済産業大臣賞を受賞した木更津工業高等専門学校の「Yone-labo」だ。

 当時メンバーは全員10代だったが、大学の強豪チームに交じり、堂々たる戦いぶりを見せた。さては特訓を受けて、念入りに準備して挑んだのかと思いきや、本人たちは「元々出場するつもりはなかった」と言うから、拍子抜けしてしまう。彼ら一体、何者なのか――。

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高専ホワイトハッカー チームを育んだ 〝遊び場〟

7:<世界が欲しがる『KOSEN』>科学技術立国復活のために見直すべき高専人材の価値(2022年11月18日)

「高専」の価値を社会で認めることが日本の科学技術立国復活につながる鍵となるはずだ (YUICHIRO CHINO/GETTYIMAGES)

 世界が欲しがる「KOSEN」。かたや国内では「どこの専門?」と聞き返される「高専」。この奇妙なねじれに、日本を覆う学歴社会の分厚い暗雲とそこに差し込む光を同時に見る。

 高度経済成長期、日本の産業界からの技術者養成の要望に応えるべく創設された国立高等専門学校(高専)。1962年に12校から始まり、今年60周年を迎え、11月16日には高専制度創設60周年記念式典が開催された。15歳から5年間の早期専門教育を受けた多くの卒業生が、技術者として科学技術立国・日本の発展を支える一翼を担ってきた。昨今はさまざまな社会課題に技術で挑む高専生の姿が報道されるなど、その活躍はまさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。

 現在、全国には国公私立合わせ57校の高専があり、少子化で学校の統廃合が進む中でも、その数は増えている。2023年には徳島県に神山まるごと高専の開校が予定され、滋賀県でも県立高専の新設が決まっている――。

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創設60周年で世界も注目 「高専生」が社会で活躍するには

8:【脱・人口減決定論】人手不足は少子高齢化のせいではない 真犯人はいったい誰なのか?(2024年2月28日)

(Dumitru Ochievschi/tokoro/gettyimages)

 人口減がデフレをもたらし、人手不足をもたらしているという人口減決定論はあらゆるところで強い力を持っているようだ。ただ、最近の日本経済新聞は、「「人口が減ればモノやサービスの需要が落ち、デフレになる」が通説なのだが、このところ人手不足による賃上げが要因の値上げが起きている」と述べている(「「人口減デフレ」の通説覆す」日本経済新聞2024年2月12日)。

 しかしそれでも、人口減が雇用状況やデフレを説明するという人口減決定論は根強いものがある。うち、人口減と雇用状況を結び付ける議論に対して考えたい。ただし、人口減決定論と言っては単純化しすぎで、人口減に伴う高齢化という人口構成変化とそれによる社会構造の変化が雇用情勢の変化をもたらしているというべきかもしれない。まず、簡単なものから議論したい――。

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【脱・人口減決定論】人手不足は少子高齢化のせいではない 真犯人はいったい誰なのか?

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