東京ディズニーリゾート(TDR)を運営するオリエンタルランドが新事業として、日本においてディズニークルーズを2028年度から開始すると発表した。ディズニークルーズは、米国では1998年から就航されており、現在5隻が運航する中、さらに3隻増え、シンガポールでの就航も予定されている。
今回のクルーズ船は、客室数が約1250室、乗客定員は4000人ほどで、総トン数は、日本籍のクルーズ船としては最大級の約14万トンに上る。航路は、首都圏の港を発着する2泊から4泊程度の短期航路を想定しており、総投資額は約3300億円という 。
オリエンタルランドの吉田謙次社長は 「かねてよりグループのさらなる成長のためにTDRがある舞浜地区以外での事業を検討していた。就航から数年後の年間乗客数は約40万人、年間売上高は約1000億円を見込んでいる」と語っている。
経営戦略的視点からは、オリエンタルランドグループが30年に目指す姿を掲げ、よりサステナブルな事業構造へ転換し、持続的に発展するための一環としてディズニークルーズを位置づけているのが見えてくる。長期的視点からのバックキャストも興味深い。ただ、本稿では同社の取り組みというだけでなく、これをきっかけとしてクルーズ観光を日本がどのように活用すべきかの基本情報を提供したい。
クルーズ観光産業とは
クルーズ観光産業は“船内スペースにおいて宿泊、ダイニング&ドリンク、エンターテインメント、ヘルス&ウェルビーイングなどを組み込んだオール・インクルーシブ(さまざまなサービスを包括した)観光形態である。
日本外航客船協会はクルーズの定義を①船に乗ること自体が旅行の主目的、②航空機・鉄道などの代替輸送手段ではない、③船内のレジャーや滞在、洋上ライフを楽しむことが主目的、④宿泊を伴うとしている。また、クルーズ・ツーリズムは全体的または部分的にクルーズ船を利用したツーリズムである。
世界のクルーズ市場の統計は正確な数字がおさえにくく、20年度の市場規模を130億ドル(約2兆円)とする市場分析を手掛けるディールラボの予測から、21年の市場規模を53億ドル(約8400億円)程度とするアライド市場調査まで幅がある。どちらにせよクルーズ観光は観光分野の中でも特にダイナミックな市場である。
クルーズ観光は95年の560万人から19年には2970万人に増加していたが、米国のクルーズライン国際協会(CLIA)が出した24年版クルーズ業界現状報告書によれば、世界の市場規模は19年からコロナ下で約81%減少しクルーズ関係企業に莫大な損失をもたらしたが、23年にはクルーズ旅行客数が3170万人と19年を6.8%上回った。世界全体では23年の他の旅行業態の回復度合いは19年の88%程度であったことと比較するとクルーズ業界の回復は早く、まさにダイナミックな業界である。