2024年7月22日(月)

Wedge REPORT

2024年7月22日

 CLIAの報告書では23年のクルーズ旅客は全世界で3億1700万人、うち北米が1億8100万人、欧州8200万人、アジア2300万人である。クルーズ業界の最大市場で、客数ベースで世界の56%である北米市場は19年比17.5%増、欧州は19年比で6.5%の回復だが、アジアは19年比37.7%減であった。どの調査を見ても世界のクルーズ市場は順調な成長が予測されており、30年までに年率10%前後の成長が予想されている 。

雇用の創出など経済効果は

 コロナ前の18年にクルーズ業界は117.7万人の正規雇用を創出し、502.4億ドルの給与を支払う産業となっていた。クルーズ業界の非正規雇用の実態はなかなか把握できないのだが、外交海運業においてはその大部分が期間限定的な契約ベースで勤務するといわれており、クルーズ業界においても相当数の非正規雇用者が活用されていると想定される。

 世界では300隻以上のクルーズ船が存在するといわれているが、特に近年のクルーズ船は「海上を動く街」と称されるほど大型化しており、20年には20隻以上の大型(13万~18万トンで乗客定員4000~5000人)の大型船の就航が予定されていた。これらは運航、ダイニング&ドリンク、エンターテインメント、ヘルス&ウェルビーイングなどの多様な分野で大量の従業員を必要とする。多くの観光事業でリテンションが課題になっているのと同様にクルーズ業界でも正規・非正規の採用とリテンションは成長に向けての課題であろう。

 日本のクルーズ観光では国土交通省のクルーズ観光船としては飛鳥II(乗員定員数872人)、にっぽん丸(同523人)、ぱしふぃっくびいなす(同620人)、がんつう(同38人)の4隻が統計に含まれている。ちなみにクルーズ船は船に宿泊するので、国際観光統計の観光には含まれず、日帰り旅行者とみなされる。

3つのクラス

 クルーズ客船は、そのサービス内容と価格帯により、下記の3クラスに区分される。クラス分けは、一つひとつの船についてではなく、「クルーズ会社」について判定される。

1、マス(Mass)もしくはカジュアル(Casual)で、1人1泊70ドル以上。船の大きさは10万~20万トンで乗客数は2000~6000人。船を大型化することによるスケールメリットで単価を下げ、船内での飲食の有料部分を多くしたり、カジノのスペースを大きく取り、それらを収益源とする場合が多い。ディズニーもこのカテゴリーに含まれる。エンターテインメント施設が充実している。

2、プレミアム(Premium)は1人200ドル以上/泊で、船の大きさは5万~15万トンで乗客数は1000~3000人。

3、ラグジュアリー(Luxury)は1人400ドル以上/泊から。船の大きさは1万~3万トンで、乗客数は100~500人。

 クルーズ運航会社は上位4社で約9割のシェアをおさえる寡占市場である。1位はシェア37.3%のカーニバル・グループ、2位はロイヤル・カリビアン(RCI)で23.9%、3位がノルウェージャン・クルーズラインで14.1%、4位がMSCクルーズで7.1%である。ちなみにロイヤル・カリビアンは24年7月中旬の時価総額は428億ドル(約6.7兆円)と武田薬品やダイキンとほぼ同等であり、カーニバル・コーポレーションは228億ドル(3.6兆円)とスズキ自動車と同等であり、なかなかの大企業なのである。

 各グループは複数の特徴のあるクルーズブランドを持つ。例えば、フランスでいくつかのクルーズを経験した人が言うには、カーニバルグループのコスタは、欧州でキャンプ場に行くようなカジュアルな旅行がクルーズになったようだったという。日本のみなさんが持つ“豪華客船”とはイメージがずいぶん違うクルーズもあるのだ。


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