90年からエネルギー市場の自由化を行った英国では、ガス・電力供給を行っている大手6社がこの冬、ガス・電力料金を4~10%上げることを発表した。04年に552ポンドだった家庭の年間平均エネルギー価格は13年12月には1312ポンド(約22万円)に達すると見込まれて、実に2.4倍だ。この間の平均所得の伸びは20%しかなく、所得に占めるエネルギー支出の比率は大きく上昇した。
(11月26日、アフロ/AP)
最近行われた世論調査では、節約のために32%の人が間違いなく電気を消すか暖房を停めると回答し、35%の人が多分そうすると回答した。英第2位のスーパーマーケット、アスダが5500人の母親を対象に実施した調査では、若年層の母親の4分の3、全体の3分の2が、必要な暖房を行えないと答えている。
エネルギー価格の値上げ発表を受け、ミルバンド労働党党首は15年の総選挙で勝利すれば20カ月間エネルギー価格を凍結するとの公約を早々に発表した。議会の答弁に立ったキャメロン首相は「国際市場をコントロールできないのに価格を凍結するというのはペテン師の政策だ」と述べたが、後に、エネルギー企業が顧客に提示する価格は最大でも4種類に限り、さらに各家庭に最安値になる料金を提示するように要請する意向と報じられた。これは自由化の放棄とも批判されている。
英議会が11月に発行したエネルギー価格に関するレポートによれば、自由化以降、ガス・電力料金はいったん下落したが、00年から04年頃を底に値上がりしている。自由化後増加していた北海からの天然ガスの生産量が、00年にピークを打ったからだ。市場を自由化すれば、企業には供給義務はなくなり、自由に価格設定が可能になる。英国の現状は自由化の行き着いた姿と言える。
エネルギー供給の将来像を示せ
12月6日、経済産業省の審議会で、エネルギー基本計画に対する意見(案)が示されたが、原子力については「重要なベース電源だが、依存度は可能な限り低減」との表現に留まっている。将来の望ましい電源構成(ベストミックス)の決定は先送りされ、賛否の分かれる再稼働をどこまで行うのか、将来老朽化した原発の建て替えを行うのか、政権の意思は全くわからない。民間企業は当然投資できず、化石燃料の手当てを行うこともできない。
一方で、再エネは「今後3年程度、最大限導入を加速」、電力システム改革は「全面自由化を断行」と書かれている。欧州で明らかになっているように、再エネの大量導入は電気料金を大きく上昇させ、経済に悪影響を及ぼす。