行き詰まるドイツ 凍える英国
太陽光、風力などの再生可能エネルギーを加速するために、菅直人元首相が辞任と引き換えに導入を迫った固定価格買い取り制度(FIT)は、ドイツで成功をおさめたと言われていた。しかし、そのドイツでFIT見直しを政権が言明している。
00年からFITで再エネからの電気を高く買い取ってきたドイツでは、FIT導入時に、11万kW、610万kWにすぎなかった太陽光、風力発電が、それぞれ3000万kWを超え、合わせて発電設備量の3分の1を超えるまでになった。しかし、いつも発電できるわけではないから、発電量で見ると、太陽光4.6%、風力7.3%で、合わせて全電力需要の12%を賄うだけだ。
電気料金に含まれる消費者のFIT負担額は、家庭用では1kW時当たり5.28ユーロに達している。14年には6.24セントになることも決定済みだ。13年の電気料金は1kW時当たり28.5セントであり、負担額は電気料金の20%近い。
さすがのドイツ国民も、この負担は過剰と思い始めた。12年の段階で、国民の51%が「高過ぎる」と回答している。特に、旧東ドイツ地区では高過ぎるとの回答が多く、70%を超えている州もある。
再エネの問題は料金以外にもある。太陽光、風力による発電ができない時のバックアップのために、いつも発電が可能な火力発電所を保持しておく必要があるが、再エネの優先接続により火力発電所の稼働率が低下し、電力会社は維持が困難になってきた。欧州の大手10電力会社の首脳が再エネへの補助金廃止をEU委員会に訴える事態になっている。
逆に、需要がない時に発電されるのも困ったことになる。例えば、風は夜間に吹くことが多いが、夜間はあまり電気の需要がない。需要があるところに電気を送る必要があるが、送電能力が問題になる。
ドイツでは、風力発電所は風の強いバルト海、北海沿岸部に多い。夜間風が吹くと、需要がある南部に電気を送る必要があるが、送電能力が不足している。そのために、電気は勝手にチェコ、ポーランドなど隣国の送電線を通って南部に流れてしまう。予期せぬ電気により自国内の送電の安定性が脅かされるポーランドは、電気の壁を作りドイツからの電気の流れ込みを14年から防ぐと発表した。ドイツは国内で北部から南部へつなぐ送電線を1500億ユーロの予算で建設する予定だが、地主の反対が強く目途は立っていない。
日本では震災後、火力発電のたき増しで電力料金が上がり、電力自由化が叫ばれるようになった。料金規制が残る家庭向け小口小売りを自由化し、総括原価方式を撤廃すれば、電力料金が下がるという目論見で電力システム改革が進められている。