2024年7月29日(月)

BBC News

2024年7月29日

イスラエルが占領するゴラン高原の村にロケット砲が着弾し、子供や若者が計12人殺害されたのを受け、28日には葬儀に大勢が集まった。イスラム教シーア派組織ヒズボラによる攻撃だと非難するイスラエル軍は同日、複数のヒズボラ拠点に反撃したと発表した。

イスラエル国防軍(IDF)によると、ドゥルーズ派の多く住むゴラン高原マジダル・シャムス村で27日、サッカー場にロケット砲が着弾し、12人の子供や若者が殺害され、数十人が負傷した。

IDFは28日早朝、「レバノン領内の奥深く」にあるヒズボラ拠点7カ所を空爆したと発表した。死傷者の有無は不明。

イスラエルの攻撃に対し、ヒズボラは同日、イスラエルの基地2カ所を攻撃した。

ヒズボラは、マジダル・シャムス村攻撃への関与を否定している。他方、村から約3キロ離れたイスラエルの基地を含む4カ所への攻撃については、自分たちによるものと認めている。

米ホワイトハウスは、27日の攻撃はイランの支援を受けるヒズボラによるものと非難した。

28日にはマジダル・シャムス村で犠牲者の葬儀が行われた。イスラエル・メディアによると、ドゥルーズ派住民たちが泣きながら棺を運んだ。葬儀に参列した政府幹部に、怒りをぶつける住民もいたという。

イスラエル外務省によると、マジダル・シャムス村で殺害された12人のうち、10人は10歳から16歳だった。

訪米中だったイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ヒズボラは「重い代償を払う」と約束し、予定を切り上げて28日に帰国した。軍幹部との会議を予定している。

葬儀で住民が閣僚を罵倒

マジダル・シャムス村では28日、伝統的な白に赤の帽子をかぶった男性たちが泣きながら、白布で覆われた10の棺を運んだ。往来は参列者でひしめいていたと、AFP通信は伝えている。

女性たちは黒いアバーヤで身を包み、涙ながらに棺に花を供えた。子供たちの大きい遺影を抱える参列者たちもいた。

ファディ・マフムードさん(48)はAFPに対して、マジダル・シャムス村でこれほどの被害が出るのは今回の戦争で初めてだと話した。

「私たちのコミュニティーはとても密接で、子供たちは村の全員の子供たちのようなもの」なのだとマフムードさんは話したという。

イスラエル紙タイムズ・オブ・イスラエルによると、住民の一部は参列したイスラエル閣僚にその怒りをぶつけた。

報道によると、軍服姿の男性がニル・バルカト住宅相とイディト・シルマン環境保護相に、「こんなことになって、いまさら来たのか。今まで10カ月間、来なかったのに!」と叫ぶと、他の住民はこれに拍手したという。

別の住民は「あんたたちの約束には、飽き飽きしているんだ」とベザレル・スモトリッチ財務相に向かって怒鳴ったという。

同紙によると、ソーシャルメディアに投稿された動画では、複数の住民がスモトリッチ氏を取り囲み、罵声を浴びせ、「こんな奴はいらない!」と叫んでいたという。

イスラエルの報道によると、ドゥルーズ派の住民リーダーは自分たちの悲劇を「政治イベント」にしないため、閣僚たちに参列を控えるよう求める手紙を書いていたという。

ドゥルーズ派の多くは、イスラエル北部やレバノン、ヨルダン、シリアに住んでいる。イスラエルでは、人口の1.5%にあたり、全面的な市民権を持っている。

イスラエルが1981年にシリアからゴラン高原を併合した際、イスラエルはドゥルーズ派にイスラエル市民権を提供したが、全員がそれを受け入れたわけではない。

ゴラン高原のドゥルーズ派はイスラエルで学び働くことはできるが、投票権は市民に限られている。

ドゥルーズ派の男性には兵役があり、IDFではユダヤ系を除くと、ドゥルーズ派が集団として最も大きい。

国際社会の大半は、イスラエルによるゴラン高原併合を認めていない。

紛争拡大への懸念

イスラエルとヒズボラは、昨年10月にガザでの戦争が始まって以来、互いに攻撃を頻繁に繰り返している。今回の攻撃が、全面的な戦争の発端にならないか懸念されている。

それだけに28日には各国幹部が攻撃を非難しつつ、イスラエルとヒズボラの全面戦争を懸念して事態の鎮静化を図った。

イギリスのデイヴィッド・ラミー外相はソーシャルメディアで、イギリスは「少なくとも12人の命を悲劇的に奪ったゴラン高原への攻撃を非難する」として、ヒズボラは「攻撃をやめなくてはならない」と強調したうえで、「我々はこれ以上の事態激化と不安定化のリスクを深く懸念している」と述べた。

アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は、アメリカ政府はイスラエルの自衛権を支えるとしたうえで、「それと同時に我々は、紛争に激化してほしくない」のだと述べた。

レバノンのアブダラ・ブハビーブ外相はBBCに対して、マジダル・シャムス村への攻撃はヒズボラによるものとは思っていないとしたうえで、「イスラエルかヒズボラか、いずれかの間違いかもしれない。わからない」と話した。

レバノン政府は攻撃を非難し、全ての戦線における停戦をすべての当事者に呼び掛けている。

(英語記事 Thousands mourn children killed in Golan Heights strike

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c14711g2pqqo


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