2024年8月2日(金)

BBC News

2024年8月2日

BBCの元有名キャスターのヒュー・エドワーズ被告(62)が未成年のわいせつ画像を作成した罪で逮捕・起訴された件について、BBCのティム・デイヴィー会長は1日、逮捕を知りながらも同被告を解雇しなかったことについて、BBCニュースに説明した。

BBCニュースによる取材の中で同会長は、BBCは「公正かつ賢明な方法で困難な決断」を下したと述べた。

エドワーズ被告は昨年11月に逮捕されたが、その時点ですでに別の疑惑で停職となっていた。しかし、今年4月に「医師の助言」を受けて退職するまで、給与の全額を受け取っていた。

BBCは1日に声明を発表した際、エドワーズ被告が「深刻な犯罪の疑いで逮捕され、保釈されたことを内々に知らされていた」と説明した。

デイヴィー会長は、昨年11月時点でBBC幹部はどの程度の内容を知らされていたのかという質問に、「深刻な問題だとは承知していたものの、具体的なことは何も知らかなった」と答えた。

かつてBBCで最も著名なニュース司会者の一人だったエドワーズ被告は7月29日に起訴され、8月1日にウェストミンスター治安判事裁判所に出廷。子どものわいせつ画像を作成した罪3件について有罪を認めた

エドワーズ被告は2020年12月から2021年8月までに、子どものわいせつ画像41枚を、別の男性からメッセージアプリのワッツアップで送信されていた。

それらのうち7枚は、最も深刻なカテゴリー「A」に分類されるものだった。その中の2枚には7~9歳ほどの子どもが写っていた。

デイヴィー会長は、BBCはエドワーズ被告の罪状が深刻なのは承知していたものの、警察はその詳細をBBCに説明していなかったと述べた。

また、画像に写っている子どもの年齢を知らなかったと語った。

その上で、今週初めに罪状の全容が明らかになった時点で、「我々は非常にショックを受けた。この数日間に明らかになった内容は、非常にとんでもないもので、その内容いについて私たちは誰も知らなかった」と会長は話した。

警察に「守秘義務」を迫られた

インタビューを担当したデイヴィッド・シリトー・メディア芸術担当編集委員が、エドワーズ被告が逮捕された時点でなぜ解雇されなかったのかと尋ねると、デイヴィー会長は、「警察が我々のところにやってきて、完全な秘密厳守で仕事をする必要がある。『この件は極秘にしてほしい』と言ったからだ」と話した。

また、この時点ではエドワーズ被告は起訴されておらず、潔白が証明される可能性はまだあったと、デイヴィー会長氏は指摘した。

「我々はこの件を長い間、熟慮した。条件反射的に決めたわけではない。前例から考えても、誰かが逮捕されても起訴されないことはあり、何も追及されないこともある」

デイヴィー会長は、エドワーズ被告に対する安全配慮義務も考慮する必要があったと付け加えた。

「11月に下した決断について言えば、難しい決断を迫られたことは明らかで、非常に慎重に検討した」

「警察は(中略)完全な守秘義務の保証を求めていた。あの時点で(逮捕について)私たちに連絡してきたのは、従業員を確実に保護するための手続きの一環だった」

「この時点でのもうひとつ、非常に重大な安全配慮義務を考慮する必要があった。警察の職務遂行は警察に任せて、いざ起訴となれば我々も動くと決めたのは、正しい判断だったと思う」

ロンドン警視庁は、昨年11月8日の逮捕について、「極秘」にBBCに伝えたことを認めた。

「コモンロー警察開示法(CLPD)は、誰かが逮捕されたり犯罪を犯したと疑われたりした場合に、警察がその人物の雇用主に知らせることができる、確立された法的メカニズムだ」と、警視庁の報道官は説明した。

「この法律は、その人物が世間で信頼され、責任を負う立場にある場合に適用されることが多い」

「逮捕者の雇用主が、どのようなリスク低減措置が必要かを検討できるようにするため、情報は極秘に提供される」

なぜ昇給を

エドワーズ被告は昨年度、番組出演をほとんど停止していたにもかかわらず、4万ポンドの昇給を受けた。

デイヴィー会長は、この昇給は疑惑が持ち上がる前のものだと説明した。

「(小幅のインフレ率反映による)賃金上昇があったが、それは普通のことだ。しかし年次報告書にあるような大幅な昇給は、BBCでの仕事の範囲拡大に関するもので、疑惑が持ち上がるずっと前の(2023年)2月までのものだ」

また、エドワーズ被告が年金を受け取るのかという質問については、「年金を取り戻すのは非常に難しく、不可能に近い」と答えた。 「残念ながら、これが年金の具体的な仕組みだ」。

そのうえでデイヴィー会長は、「しかし給与に関しては、(払い戻しは)法的に難しいものの、我々はあらゆる選択肢を検討するつもりだ」

BBCニュースは、BBCが独自に行ったエドワーズ被告に関する調査についても質問した。

デイヴィー会長は、BBCには「警察と共有する必要がある内容や、あるいは、適切なフォローアップをしていなかったと思える深刻な性質の内容は何もない」と述べた。

「明らかになった罪状は本当にとんでもないものだが、その証拠はBBCの手にはない。これは断言できる。もし私がその証拠を見たとしたら、(警察に提供する)という判断は別に複雑なものではない」とも会長は話した。

さらに、今週以前にこの疑惑を知っていたBBCニュースの関係者はいるかという質問に対し、デイヴィー会長は、デボラ・ターネス最高経営責任者(CEO)が当時、エドワーズ被告の逮捕を認識していたと認めた。

一方で、この情報を知っていたのは「中心のごく少数の人たち」で、情報を共有する顔ぶれは「きわめて限られいた」とデイヴィー会長は付け加えた。

「BBCニュースに関して言えば、ニュース担当のデボラ・ターネスCEOの名前があった。ただし、彼女はこの件の報道には関与していない」

ターネスCEOを除き、BBCニュースは29日にロンドン警視庁が発表するまで、エドワーズ被告の逮捕も起訴も知らなかった。BBCニュースは、BBCに関する報道において編集上、経営陣から独立している。

首相や文化相が懸念表明

キア・スターマー英首相は1日、エドワーズ被告の起訴に「衝撃を受け、愕然(がくぜん)としている」と述べた。

その後、文化・メディア・スポーツ省の報道官は、リーサ・ナンディー文化相がエドワーズ被告の「おぞましい行為」にショックを受けていると述べた。

文化省は声明の中で、「文化相はBBCと話をし、ヒュー・エドワーズに対する独自の調査の取り扱い、この件に関してどのような保護措置と手続きがとられたのか、そして、特に受信料支払い者の金銭の取り扱いに関して、今後どのような措置がとられる可能性があるのかなどについて、懸念を表明した」と述べた。

ナンディー文化相は、この事件が社会的信用を損ないかねないと懸念しており、進捗(しんちょく)状況を常に報告するよう求めているという。

(英語記事 BBC knew severity of Huw Edwards allegations, says chief

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c1474dnxp84o


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