2024年8月7日(水)

BBC News

2024年8月7日

シェイク・ハシナ前首相が辞任・国外脱出したバングラデシュで6日、ノーベル平和賞受賞者で、ハシナ氏の長年の政敵だったムハマド・ユヌス教授(84)が、暫定政府のリーダーに指名された。

ハシナ氏は5日、数週間にわたる反政府デモの末に辞任。国外に脱出し、同日中にインドに到着したと伝えられている。

ユヌス氏はマイクロ・ローンの先駆的な利用で称賛されているが、ハシナ氏は同氏を反社会的な人物だとみなしていた。バングラデシュの裁判所は今年、ユヌス氏に禁錮刑を言い渡したが、同氏は罪状を否認しており、起訴は政治的な動機によるものだと主張している。

抗議デモを主導していた学生らは、軍主導の政権は受け入れないと述べ、ユヌス氏が暫定政権を率いることを求めていた。

モハンマド・シャハブッディン大統領は、軍幹部や学生のリーダーなどと会合を開き、ユヌス氏を暫定政府の主任顧問とすることを決定した。

ユヌス氏は、「多くの犠牲を払った学生たちが、この困難な局面で私に介入するよう要求している。断ることなどできるだろうか?」と語った。

広報担当者によると、ユヌス氏は現在パリで軽度の治療を受けており、ダッカに戻るところだという。

ユヌス氏とは

ユヌス教授は1983年にグラミン銀行を設立。同行は貧しい人々が小規模ビジネスを始めるのを支援するために、少額かつ長期の融資を提供している。グラミン銀行の理念はその後、世界中に広まった。

こうした功績が認められ、ユヌス氏とグラミン銀行は2006年にノーベル平和賞を受賞した。

ユヌス氏は国際的に「貧困層のための銀行家」として知られている。しかしハシナ氏は、ユヌス氏が貧しい人々の「血をすすっている」と述べ、グラミン銀行が法外な金利を請求していると非難していた。

ユヌス氏は今年1月、労働者のための福利厚生基金の設立を怠り、バングラデシュの労働法に違反したとして、6カ月の禁錮刑を言い渡された。

ユヌス氏の支持者らは、この裁判は政治的な動機によるものだとしている。判決を不服として控訴しているユヌス氏は、「すべての判例と論理に反する」と述べていた。

同氏に対する裁判は、脱税や定年を超えてグラミン銀行に勤めたなどの罪状でも提起されているが、ユヌス氏と弁護士は、いずれも根拠がないと主張している。

バングラデシュでは7月に公務員採用枠の割り当て制度をめぐり、学生らによる平和的な抗議デモが発生。その後、より広範な反政府運動へと発展した。

政府の治安部隊と抗議者との衝突で、これまでに400人以上が死亡したとみられている。

5日だけでも、全土で起きた暴力的な衝突で100人以上が亡くなり、抗議が始まって以来、最も死者の多い1日にとなった。また、数百カ所の警察署が放火された。

抗議者らはこの日、首相公邸へ突入し略奪行為を行った。ハシナ氏は隣国のインドへ脱出し、15年にわたるハシナ政権が終わりを迎えた。

これに伴い、ハシナ政権下で収監されていたカレダ・ジア元首相(78)や活動家のアフマド・ビン・クアセム氏など、著名な野党関係者が釈放された。

バングラデシュ民族主義党(BNP)の党首であるジア氏は、ハシナ氏のもとでは自由で公正な選挙は不可能だとして、2014年と2024年の選挙をボイコットしていた。

ジア氏は同国初の女性首相で、1991年から1996年まで同職にあったが、2018年に汚職で収監された。

一方、権利保護団体によると、活動家のクアセム氏は2016年に治安部隊に連行された。ハシナ政権では、数百件の強制失踪事件が起きており、そうした事例の一つだという。

インドがハシナ氏の到着を認める

隣国のインドでは、S・ジャイシャンカール外相が、バングラデシュの「法と秩序が目に見えて回復するまで深く懸念している」と述べた。両国は4096キロの国境を接し、経済的にも文化的にも緊密な関係にある。

ジャイシャンカール外相はまた、ハシナ氏が「非常に急に」インドへの渡航を要請し、その後デリーに到着したことを、初めて公式に明らかにした。

インドはまた、バングラデシュとの国境沿いに追加部隊を配備した。

「国境警備隊も、この複雑な状況に鑑み、特別な警戒態勢をとるよう指示されている」とジャイシャンカール氏は語った。

各国首脳らもバングラデシュに対し、ユヌス教授の就任後に民主主義を守るよう求めた。

アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は、「暫定政府が下すいかなる決定も、法の支配を守り、人々の意思を反映させるために(中略)民主主義の原則を尊重する必要がある」と述べた。

オーストラリアのペニー・ウォン外相は、すべての当事者に暴力を慎み、「普遍的な権利を尊重」するよう呼びかけた。

また、「我々は、ここ数週間の出来事について、完全かつ独立した公平な調査を強く求める」と、ウォン氏は付け加えた。

(英語記事 Nobel Peace Prize winner to lead Bangladesh interim government

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cgm7gvxxp1eo


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