イスラム組織ハマスは6日、パレスチナ自治区ガザ地区における指導者ヤヒヤ・シンワル氏を、ハマス全体のトップに選出したと発表した。
この決定は、7月末にイランで最高幹部イスマイル・ハニヤ政治局長(62)が殺害されたことを受けたもの。話し合いはカタールのドーハで、2日間にわたって行われていた。
シンワル氏は2017年以来、ガザ地区における指導者を務めている。今回の決定により、シンワル氏は政治部門のトップも務めることになる。
ハマス幹部がBBCに語ったところによると、ハマス指導部は全会一致でシンワル氏を指導者に選んだという。
イランはハニヤ氏暗殺の責任はイスラエルにあるとして報復を誓っており、中東の緊張が高まっている。この件についてイスラエルはコメントしていない。
ハマスで「最も過激な人物」
ドーハでは2日間にわたり、ハマスの有力者が参加する会議が開かれ、ハマスの次期トップの候補が絞り込まれた。
多くのシナリオが議論されたが、最終的にはシンワル氏と、ハマスの政治部門を選出するシューラー評議会を率いるモハメド・ハッサン・ダルウィッシュ氏の2人が提示された。
評議会は全会一致でシンワル氏を選んだ。あるハマス幹部はBBCに、「これはイスラエルへの抵抗のメッセージだ」と説明した。
「イスラエルは、解決に前向きで柔軟なハニヤ氏を殺した。イスラエルは今、シンワル氏と軍事指導部に対処しなければならない」と、この幹部は述べた。
ハニヤ氏は死の直前まで、中東の外交官らから、ハマスの他の幹部と比較して現実的な人物であり、ハマスの政治的働きかけの重要な原動力だとみられていた。
一方のシンワル氏は、ハマスで最も過激な人物の一人とみなされている。
シンワル氏は現在、イスラエルの最重要指名手配者となっている。イスラエルの治安当局は同氏が、昨年10月7日の襲撃の計画と実行の首謀者だと考えている。この襲撃では1200人以上が殺され、251人が人質としてガザ地区に連れ去られた。
同国のイスラエル・カッツ外相はソーシャルメディアで、「イスマイル・ハニヤの後任としてハマスの新指導者に最大のテロリストであるヤヒヤ・シンワルが選ばれたことは、シンワルを速やかに排除し、この下劣な組織を地上から消し去ることについての、新たな説得力のある理由だ」と述べた。
イスラエル国防軍(IDF)のダニエル・ハガリ報道官は、サウジアラビアのニュース局アル・アラビヤで、「ヤヒヤ・シンワルは、史上最も残虐なテロ攻撃を行ったテロリストだ」と語った。
シンワル氏とは
シンワル氏は昨年10月の攻撃以来、公の場に姿を現していない。アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は今年6月、シンワル氏はガザ地区の「地下10階」に隠れていると考えられている、と述べた。
シンワル氏は1962年、ガザ地区南部のハンユニス難民キャンプで生まれた。
1980年代後半にハマスの治安維持組織「マジュド」を設立し、イスラエルに協力したとされるパレスチナ人を標的にした。
人生の大半をイスラエルの刑務所で過ごし、1988年に3度目の逮捕をされた後、4度の終身刑を言い渡された。
しかし、2011年にハマスが5年以上にわたって拘束していたイスラエル兵ギルアド・シャリート氏との交換で釈放された、1027人のパレスチナ人とイスラエル系アラブ人の囚人の1人となった。
現在61歳のシンワル氏は2017年、ハマスのガザ地区の政治局長に任命され、現在に至っている。
アメリカはシンワル氏を「国際テロリスト」のブラックリストに含めている。