察するに余りある岸田氏の無念さ
内政、外交をめぐる岸田内閣の功罪については、各メディアで論じられているのでそちらに譲る。
岸田氏は2021年10月、前任の菅義偉氏が1年余で政権を去った後継として登場した。直後の総選挙で議席減を最小限に食い止め、「絶対安定多数」の維持に成功した。
22年の参院選では自民単独での改選過半数を確保。支持率も一時60%近くにものぼり、25年の衆院の任期満了まで「黄金の3年」などといわれた。
しかし、参院選最中に安倍晋三元首相が撃たれて死亡した事件を契機に、自民党と旧統一教会との不明朗な関係が次々に明るみに出て、社会問題に発展した。昨年は、自民党内の政治資金パ―ティーをめぐる裏金、売り上げのキックバック問題で政権への風当たりが強まった。
首相はいちはやく自ら率いる派閥、岸田派を解散、政治資金規正法を改正、強化したが、逆風はやまず、支持率が20%台に低迷する状態が続いていた。
岸田首相自身、旧統一教会との接点をもたず、裏金問題でも〝主役〟は安倍派だったが、「所属議員が起こした重大な事態で、組織の長として責任を取ることに躊躇しない」(14日の退陣会見)と身を引く決断をした。
首相は、早い時期から決断していたともいわれ、自身も「当初から思い定め心に期してきたことだ」と心境を吐露しているが、やはり悔しさは隠しきれなかった。
トップとして責任はやむなしとしても、自らあずかり知らぬところで起きた問題で政権を去らなければならない無念さは察するにあまりあるが、「首相は恨みがましいことはまったく口にしなかった」ともいう。
退陣表明後、「世界情勢や経済状況を考えれば、岸田首相の続投がいいと思っていたので残念だ」(森山裕自民党総務会長)と退陣を惜しむ声が聞かれたのも、同情論からだろう。
清新な人物を旧態依然の手法で選ぶな
後継選びをめぐっては、すでに水面下で駆け引きがなされている。お盆明け、各議員が地元から戻ってきた後、20日に選挙日程が決まり、一気に動きが活発化しよう。
現在名前の挙がっている石破、河野、小泉、茂木の各氏らには一長一短があり、〝本命〟と目される候補はいまだみられない。一般国民から見た場合、これまで何度も名前を聞かされてきた各氏にどれだけ魅力を感じるか。43歳の進次郎氏、女性初の首相を目指す高市、野田両氏にしてもそうだろう。
総裁選は、全国の「党員・党友」票と国会議員票で争う仕組みだが、比重の大きい国会議員票をめぐって、〝既成〟の候補者が政策論議より、カネ、ポストを餌に多数派工作を展開しては、有権者が鼻白むだけだろう。