2022年11月29日(火)

安保激変

2014年1月7日

»著者プロフィール
著者
閉じる

辰巳由紀 (たつみ・ゆき)

スティムソン・センター日本部長

キヤノングローバル戦略研究所主任研究員。東京生まれ。国際基督教大学卒業後、ジョンズ・ホプキンス高等国際問題研究大学院で修士号取得。在米日本大使館専門調査員、戦略国際問題研究所(CSIS)研究員などを経て2008年より現職。2012年よりキヤノングローバル戦略研究所主任研究員を兼任。専門は日本の防衛政策、日本の国内政治、日米安全保障関係、米国の対アジア安全保障政策。

 それにも拘わらず先月、安倍総理が靖国神社参拝に踏み切ったことで「安倍は個人の信条を日米同盟の将来や日本の国益に優先させる指導者なのか? そうだとすると、尖閣諸島で状況が緊迫するようなことがあった場合に、理性的な対応をしてくれることを本当に期待できるのか? わざと中国を挑発するような行為に走らないといえるのか?」という不信感が湧き上がっている。「大局的判断よりも自分の思い入れにこだわる指導者を米国は信頼できるのか? そのような人物がけん引する日本という国との関係を強化することで、米国がリスクを抱え込んでしまう可能性はないのか?」というわけで、米国の東アジアにおける立ち位置を考慮したうえでの「日本リスク論」が首をもたげているのである。

 このような不信感は、参拝から2週間が経過した今も根強く残っている。これまでは靖国神社参拝を「日本と中国・韓国の間の過去の歴史を巡る問題の一つ」であるとして、事態を静観していた米国が、今回の靖国神社参拝を契機に、この問題に当事者意識を持ち始めるに至っているのである。

日米関係への影響は不可避

 特に今回、総理の靖国神社参拝についての事前説明が日本側から全くなかった(参拝するという通報も、参拝の30分前に行われたという話もある)ことが、米政府の苛立ちを強めているようだ。ビジネスライクなことで知られるオバマ大統領は「サプライズ」を何よりも嫌うが、今回の参拝はオバマ政権にとっては「サプライズ」以外の何物でもなかった。小泉政権時代のように、米国との関係が指導者の強力な個人的関係にけん引され、ブッシュ大統領の強い意向を受けた米政府が、小泉総理に対する表立った批判を一貫して抑制していたような時代ではない。

 しかも、今回の参拝は、米国からの度重なるメッセージを無視して強行された、という見方がワシントンではほぼ、定着している。「水面下でのメッセージが伝わらないなら、これからはもっとはっきりと、公の場で米国は発言すべきではないか」という主張がジワジワと説得力を増している。今回のアメリカ大使館から出た声明がその第一歩となってしまう可能性も十分にあるのだ。

 参拝以降、「来春のオバマ訪日は中止すべきでは」との声も根強く残っている。「訪日は中止すべきではない」という意見の人の中にも、「オバマ大統領本人の口から、はっきりと安倍総理に米国の不快感を伝えたほうがいい」と思っている人がいる。つまり、日本での認識とは異なり、今回の参拝は今後の日米関係に何らかの影響を及ぼすことは避けられないというのがワシントンの雰囲気なのだ。

新着記事

»もっと見る