2025年12月17日(水)

WEDGE REPORT

2025年12月17日

 香港北部の大埔(Taipo)地区にある公営住宅「宏福苑(Wang Fuk Court)で2025年11月26日に起きた火災は少なくとも160人(12月9日現在)が死亡するという香港史上、最悪の火災の1つとなった。その中で、今の香港の現状を物語る象徴的な出来事は、民間ボランティアが政府からの圧力を受けて活動が難しくなったことだ。

香港史上でも最悪の火災の1つとなった(筆者提供、以下同)

 香港政府や中国当局が香港市民の動きが反政府的にならないかを警戒しているためだ。それは「人を助けたい」という香港人の自然な感情と「反政府的の動きは必ず抑える」という中国的な動きのせめぎ合いだった。

火災の燃え広がりの〝原因〟

 火災が起きた大埔は、九龍地区の中心地である尖沙咀(Tsim Sha Tsui)から北へ電車で約30分のところにある。近くに日本人学校があるほか、火災現場から車で10分ほどのところに日清食品、山崎製パン、ヤクルトなど日系企業が工場を構えるなど香港在住日本人にも縁が深いエリアだ。

 大火災となった宏福苑は、1983年6月に完成。全8棟で、31階建て、1フロアあたり8戸、合計で1984戸となっている。1戸あたりの大きさは431~483平方フィート(40~45平方メートル)の2ベッドルーム(=2LDK)の家が多い。

 話題となった竹は、1本あたり15香港ドル(約300円)なのに対し、金属製は280香港ドル(約5600円)で、竹の足場は1階から高さ無制限で組むことができるのに対し、金属製では一定の高さを超えると移動昇降式足場「リフトクライマー」など特別な装置が必要なため費用面に大きな差が出る。

 竹は火災の原因の一部ではあるが主要因ではない。火災を悪化させたのは難燃性の基準に満たしていない防護ネットを使用したことで燃え広がった。香港政府は25年の春に竹から金属にシフトすることを明言したが、もし竹ではなく金属の足場であっても、違法な防護ネットであれば火災は燃え広がった可能性が高い。


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