2025年12月18日(木)

WEDGE REPORT

2025年12月17日

 駐香港維護国家安全公署は29日に「災害を利用して香港を混乱させることを企てる反中・乱港分子に対し、国安法と国家安全維持条例によって追及し、処罰する」という声明を発表。反政府的なものは許さないと市民に警告した。 

 救援ステーションは29日に強制撤去となり、關氏も同日、香港警務處國家安全處に身柄を拘束された(12月1日に釈放)。翌30日にも、前屯門区の議員だった張錦雄氏が反政府的な動きを煽動したとして当局に逮捕され、追悼メッセージも12月7日限りで撤去された。

香港政府庁舎

 総合的なウェブサイトも、尋ね人の情報以外は、香港政府が製作した被災者支援のサイトにリンクする体裁に変わるなど、当局は反政府運動につながらないよう一気に動いた。

 これは、12月7日に開催された立法会(議会)選挙に影響すると考えたともみられた。親中派しか出馬できない内輪の出来レースに関心を寄せる香港市民は少なく、実際の投票率も過去2番目に低い31.9%。香港政府や中国当局の警戒は徒労に終わった。

 ある香港人は「火災の責任の所在について政府に説明してもらわないといけないけど、私たちはただただ、被災した人を助けたいのです。香港・中国政府とも火災を自ら政治化させて、物事を複雑化させていますよね」とため息をついた。

 市民は、どんな活動が違法なのかがわからない国安法がある以上、リスクが大きい政治的な動きをするつもりはない。この香港人が語ったように、政府側は自らの政治色を強める形となり、イメージが悪化する結果生んだ。

市民の力を一番知っているのは中国当局

 なぜ中国はそれほどまで人民の力を恐れているのか?中華人民共和国の歴史を考えるとすぐにわかる。

 人民…そう農民の支持があったからこそ建国できたからだ。人々が集団行動を起こした場合、政権を変える大きな力があることを、身をもって経験している。しかも、宿敵、蒋介石率いる国民党政権から「逆転」だ。それゆえに過剰気味に反応する。

 香港政府もそうだ。03年に基本法23条に伴う国家安全条例を法制化しようとして50万人のデモをひきおこしたほか、14年の雨傘運動、19年のデモと、彼らにとって悪夢を連続して体験した。今の香港政府は中国当局の意向に合わせるしかなく、彼らに選択肢はないが、過去の経験を考えると、抑え込みたいと考えるのは自然だ。

 独立委員会を設置し、9カ月以内に報告書を公表すると発表したのも、更なる波風を起こさせないための措置だ。

 香港の治安維持の権限は、事実上、中国当局が握っており、1国2制度の形骸化を表している。今後も何かあれば「中国型」を使って、「香港型」の根がなくなるまで刈り取ろうとするだろう。

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