2024年8月19日(月)

BBC News

2024年8月19日

トム・ベイトマン米国務省担当編集委員(長官に同行取材)、ジェイムズ・グレゴリー記者(BBCニュース)

アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官はイスラエルとイスラム組織ハマスの戦争の停戦と、パレスチナ自治区ガザ地区にとらわれている人質の解放の合意に向け、18日にイスラエルに到着した。

ブリンケン長官のイスラエル訪問は、昨年10月に戦争が始まって以来、9回目となる。アメリカは先に、両者の長年の溝を埋めることを目的とした修正案を提示している。

15日にカタール・ドーハで協議が再開されて以来、アメリカは合意について楽観的な見方を示しているが、ハマスは進展があるという見方は「幻想」だとしている。

両者は現在、イスラエル軍がガザ地区から完全撤退する必要があるのかという点で対立していると、ハマスは述べている。

こうした中でブリンケン氏は、19日にイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と会談する際、引き続き圧力をかけるものとみられる。

アメリカ高官の一人はイスラエルへ来る途中、「決定的瞬間」や「変曲点」といった表現を使っていた。

アメリカは、おそらく来週の今頃にも、交渉をゴールラインに到達させたいと考えている。

しかし、イスラエル政府やハマスがこの楽観論を共有しているわけではない。お互いがお互いを、強情で冷笑的で、合意を妨害していると非難している。

ハマスは18日の声明で、イスラエルのネタニヤフ首相が「戦争を長引かせる」ために合意への道を「妨害」し、「新たな条件と要求を設定」していると非難した。

また、仲介者の働きかけを妨げ、「合意を妨害」したことについて、ネタニヤフ氏に「全責任がある」と付け加えた。

ハマスの情報筋は以前、サウジアラビアのメディアに対し、合意案には、ガザ南部とエジプトの境界沿いの「フィラデルフィア回廊」と呼ばれる戦略上の重要地帯から、イスラエル国防軍(IDF)の存在感を低下させることが含まれていると語っている。

しかし、イスラエルの情報筋は同国紙「タイムズ・オブ・イスラエル」に対し、境界沿いでの他の手続きで、取引の第1段階におけるイスラエルの撤退を補うことができると語っている。

ハマスは昨年10月7日にイスラエル南部を襲撃し、約1200人を殺害したほか、251人を人質としてガザ地区に連れ去った。

これを受けてイスラエルが開始した軍事作戦により、これまでに4万人以上のパレスチナ人が殺されたと、ハマスが運営するガザ地区の保健省は発表している。

昨年11月に行われた1週間の一時戦闘停止では、ハマスが人質としていた105人と、イスラエルで収容されていたパレスチナ人240人が交換された。イスラエルは、なお111人が人質になっているが、うち39人は死亡したとみているとしている。

バイデン大統領の楽観論は実を結ぶのか

ジョー・バイデン米大統領は先週、「私たちは合意にかつてないほど近づいている」と述べていた。

しかし、数カ月におよぶ交渉の間、浮上した楽観論はどれも実を結んでいない。

ネタニヤフ首相は18日の閣議で、人質の返還を確保するために複雑な交渉が行われているが、イスラエルの安全のためにはいくつかの原則を守る必要があると述べた。

「柔軟に対応できることと、そうでないことがある。われわれはこの二つを区別する方法をよく知っている」

また、ハマスが交渉において「頑固」だと非難し、過激派組織にさらなる圧力をかけるよう求めた。

ハマス幹部は17日にBBCに対し、「交渉仲介者たちが示した内容は、非常に残念なものだった。何の進展もない」と語った。

ハマスが公にこうして強気の姿勢を示しているのは、もっぱら交渉戦術である可能性もある。しかし、現場にある敵意と不信感はあまりに甚大で、1週間で事態を打開しようというのは非常に楽観的過ぎるように思える。

さらに、アメリカからの圧力には、同国の選挙のタイミングも背景にある。戦争当事者の両陣営よりも、アメリカの方が、素早い合意を求めているような印象もある。

イスラエルが5月27日に提示した案に基づき、バイデン大統領がまとめた当初の合意は、3段階に分けて行われる予定だった。

第1段階で6週間にわたる「全面的かつ完全な停戦」と、イスラエル人の人質の一部(女性、高齢者、病人や負傷者を含む)の解放、パレスチナ人の囚人の一部を釈放をする。イスラエル軍が「ガザのすべての人口密集地域から」撤退し、人道支援を「急増」させることも含まれる。

第2段階では、「恒久的な敵対行為の停止」の一環として、ハマスが残りの人質を解放し、イスラエル軍はガザから全面撤退する。ただ、撤退は交渉の対象となる。

第3段階では死亡した人質の遺体が返還され、ガザの大規模復興計画が開始される。

こうしたなか、ハマスが運営するガザ地区の保健当局によると、18日にはイスラエル軍の空爆によって、子供6人を含む少なくとも21人が死亡した。

IDFはこの日、ここ数週間にわたり激戦の舞台となっていた南部ハンユニスで、イスラエル攻撃に使われたロケットランチャーを破壊し、パレスチナ人20人を殺害したと発表した。

(英語記事 US pushes for Gaza truce as Israel and Hamas trade blame

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cr5nv42g306o


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