2024年8月19日(月)

BBC News

2024年8月19日

フランス映画界の代表的な名優、アラン・ドロンさんが死去した。家族が18日に発表した。

ドロンさんの家族は声明で、「アラン=ファビアン、アヌーシュカ、アントニー、そして(愛犬の)ルーボは、悲しみを込めて父親の逝去を発表します」、「子供3人と家族に囲まれ、ドゥシーの自宅で安らかになくなりました」と明らかにした。

「若者のすべて」、「太陽がいっぱい」、「山猫」、「ボルサリーノ」、など、フランスやイタリアの監督のもとで数々の名作に出演したドロンさんは、近年では健康悪化に伴い、ほとんど公の場に出ていなかった。最近では、家族同士のいさかいがフランスでしきりに報道されていた。

「映画で最も美しい男性」とその美しさをたたえられつつ、貴族の青年から殺人犯や詐欺師などさまざまな役を演じ、出演作は約90本に上る。

フランス俳優ブリジット・バルドーさんはAFP通信に対して、「彼がいなくなったことによる巨大な穴は、誰も何も埋めることができない」、「エレガンスと才能と美の大使だった。私は友人と分身とパートナーを失った」と、ドロンさんをしのんだ。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、「X(旧ツイッター)」で、ドロンさんが「伝説的な役柄をいくつも体現し、世界に夢を見させた」とたたえ、「メランコリックで人気者で秘密主義の彼は、スターだということを超えて、フランスの記念碑的な存在だった」と書いた。

称賛と批判と

ドロンさんは2019年5月のカンヌ映画祭で名誉パルムドール賞を授与された際、「生きている間に、死後のあいさつみたいなことを言う」として、「私はいなくなるが、その前に皆さんにありがとうと言っておきたい」と述べていた。

カンヌ映画祭のジル・ジャコブ元会長は、ドロンさんを「獅子のような(中略)鋭い眼光の俳優」と呼んだ。ヴェニス映画祭のアルベルト・バルベラ会長は、「不死身の神々が集うオリュンポス山」の高みに上った「象徴」的な俳優の一人だとたたえた。

パリでは訃報に接したファンがロイター通信に、「彼は絶対に死なないと思っていた」と話した。

フランスの芸能誌やゴシップ誌は何十年にもわたり、ドロンさんの俳優としてのキャリアだけでなく、その私生活や恋愛関係もさまざまに伝え続けた。名声が最高潮のころは欧州各地での恋愛沙汰が、ことさらに話題になった。

他方で政治的には、死刑を支持し同性結婚に反対するジャン=マリー・ル・ペン党首が率いた極右「国民戦線」(現「国民連合」の前身)を支持したことが、一部から批判された。

数々の女性との関係も物議をかもし、女性蔑視ではないかとの批判も呼んだ。

家族関係が話題に

最近では、家族関係の悪化がフランスでしきりに話題になっていた。

ドロンさんには、2人の女性との間に息子2人と娘がいるほか、認知しなかった3人目の息子もいる(すでに死去)。

近年では、残る3人の子供たちがマスコミを前に互いへの中傷や非難を繰り返し、訴訟合戦や盗聴録音なども続いていた。

特にドロンさんが2019年に脳卒中を起こした後は、その治療法をめぐり子供たちが争っていた。

そのほか、ドロンさんの世話を長年していた日本人女性ヒロミ・ロランさんをめぐる対立もあった。ドロンさんの子供たちは昨年、ロランさんを父親のもとから追い出したものの、ロランさんは逆に、子供たちがドロンさんに治療薬を与えず父親の命を危険にさらしていると提訴した。

今年4月になってフランスの裁判所は、ドロンさんの資産管理権限を本人から取り上げる判決を下した。

今年2月には警察が、パリ近郊ドゥシー・モンコルボンの自宅から銃器72丁と3000発超の弾薬を押収した。射撃場も見つかった。検察によると、ドロンさんは銃所持の許可を得ていなかった。

BBCはドロンさんの代理人にコメントを求めている。

(英語記事 French film giant Alain Delon dies aged 88

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cn02qeq9x79o


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