2024年8月19日(月)

BBC News

2024年8月19日

イギリス各地で、7月末のサウスポートでの死傷事件をきっかけに2週間近く続いた暴動を受け、暴徒が次々と起訴され、有罪判決が言い渡されている。こうした中、イギリス政府は19日、刑務所の過密状態を緩和するための緊急措置を発動した。

これによってイングランド北部全域では、公判を控える被告人は刑務所にスペースが確保されるまで、警察署の留置場で勾留されることになる。

「オペレーション・アーリー・ドーン」(早朝作戦)と呼ばれるこの緊急措置は、19日朝に発動された。これは今年5月にも、当時の保守党政権下で発動された。

暴動で470人超が起訴、収容能力の問題悪化

イギリス政府は「街頭での暴力的な犯罪行為に取り組む」行動が、「刑務所の収容能力という長年の課題を悪化させた」とした。

イングランドとウェールズを所管する検察庁(CPS)によると、イングランドで起きた暴動では470人以上が起訴されている。

ジェイムズ・ティンプソン刑務所担当相は、「危機的状況にあり、衝撃を受け続ける司法制度を私たちは引き継いだ。その結果、制度の機能を維持するため、難しくても必要な決断を強いられている」と述べた。

そして、今回の緊急措置は「この国の一部地域で受けているプレッシャーに対処する」一助になるだろうと期待を示した。

新制度では、刑務所の収容能力が確保されるまで、勾留中の被告の一審公判は開始されない。このため、審理開始が遅れる可能性があり、公判を待つ被告は留置場での交流が続くか、保釈されることもあり得る。

これについて司法省は、「一般市民への危険となり得る者」は「保釈されない」と方針を示している。さらに、警察が犯罪者を逮捕する能力に影響しないと説明している。

イギリスの全国警察本部長評議会(NPCC)のネヴ・ケンプ氏は、「我々は(司法)制度における需要を管理し、公共の安全を確保するため、刑事司法制度のパートナーと緊密に連携している」と述べた。

「抗議行動や行事の取り締まりを含め、公共の安全を守るために必要な逮捕をし、期待通りの逮捕が行われるようにするための取り締まりを継続していく」

刑務官組合のマーク・フェアハースト委員長は18日、BBCに対して、暴動の影響で1週間の間に異例な人数が新規に収監されたと説明。「1週間で397人が新たに収監された。16日の時点で、最も圧迫されている成人男性用の閉鎖型施設には、340人分のスペースしか残っていなかった」と話した。

イングランドとウェールズの刑務所は、収容可能人数が計8万9191人。16日の時点で実際に収容されている人数は、8万7893人に達した。

治安判事協会のトム・フランクリン代表はBBCラジオに19日、緊急措置が発動されたのは「まったく意外ではない」ことだと話した。

「司法制度はもう何年も、国民の目に見えないところで、危機から危機へとぐらぐら揺れていた」のだとフランクリン氏は言い、先月末からの暴動で「しっかり機能して、しっかり財源を確保している司法制度」の重要性を国民が認識するようになり、「長期的な解決のために何が必要か」議論が始まったと指摘した。

(英語記事 Emergency move to ease prison overcrowding activated

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cwywgpwlqg3o


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