2024年8月19日(月)

BBC News

2024年8月19日

世界保健機関(WHO)は14日、アフリカの一部地域で発生しているエムポックスのアウトブレイク(大流行)について、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。

エムポックスはかつては「サル痘」と呼ばれ、伝染力が非常に高い。今回のアウトブレイクはコンゴ民主共和国(DRC、旧ザイール)で最初に発生し、少なくとも450人が死亡した。

エムポックスの症状は?

エムポックスは、天然痘と同じ種類のウイルスによって発症するが、天然痘と比べて危険性はかなり低い。

元々は動物からヒトに感染したが、現在はヒト同士で感染する。

初期には発熱、頭痛、腫れ、背中の痛み、筋肉痛といった症状が起こる。

熱が下がり始めると、皮膚病変(発疹)が出てくる。通常は顔から始まり、他の部位へと広がっていく。最も多いのは手のひらや、かかとだという。

発疹は時に、猛烈なかゆみと痛みを引き起こすこともある。さまざまな段階を経て、最終的にはかさぶたとなり、はがれ落ちる。かさぶたの痕が残る場合もある。

感染は自然に治ることもあり、14〜21日間ほど持続する。

しかし死に至るケースもあり、特に小さな子供を含む感染リスクの高いグループにとって危険が高い。

重篤な場合には、全身、特に口や目、性器に皮膚病変が生じることがある。

現在、感染が確認されているのは?

エムポックスは、西アフリカや中央アフリカの熱帯雨林にある人里離れた村落で最もよく見られ、コンゴ民主共和国(DRC)などの国では何年も前から確認されている。

これらの地域では、毎年数千人が感染し、数百人が死亡している。特に、15歳未満の子どもが特に多く被害を受けている。

現在、主にDRCと近隣諸国で、複数のアウトブレイクが同時発生している。

ブルンジ、ルワンダ、ウガンダ、ケニアでも症例が見つかったほか、15日にはスウェーデンで初めて、アフリカ大陸以外での感染者が確認された。

エムポックスウイルスには大きく分けてクレード1(コンゴ盆地系統群)とクレード2(西アフリカ系統群)の2種類がある。

現在、アウトブレイクが発生しているのは、より危険度の高いクレード1で、中には成人よりも子供に影響力のある派生型もあるという。

また、昨年にエムポックスに感染した人々の多くが、クレード1bと呼ばれる比較的新しく、従来より危険なエムポックスを発症していることも懸念されている。

専門家によると、クレード1bについてはまだ解明されていないが、伝染力が高く、より深刻な症状を引き起こしている可能性があるという。

アフリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、2024年初頭から7月末までの間に1万4500件以上のエムポックス感染があり、450人以上が死亡したという。2023年の同時期と比較すると、症例数は160%、死亡者は19%、それそれ増加した。

エムポックスについては、2022年にもWHOが感染拡大について緊急事態を宣言したが、この時は比較的症状の軽いクレード2によるものだった。

この時には、欧州やアジアの国々を含む、通常このウイルスを目にすることのない100近くの国々に広がったが、感染リスクの高い集団へのワクチン接種によって、封じ込めに成功した。

感染経路は?

エムポックスは、感染者との濃厚接触で広がる。これには性行為や皮膚同士の接触、近い距離での会話や呼吸などが含まれる。

エムポックス・ウイルスは、皮膚の傷や呼吸器、目、鼻、口から体内に侵入する。

また、寝具や衣類、タオルなど、ウイルスに汚染された物に触れることでも感染する。

サル、ネズミ、リスなどの感染動物との密接な接触も感染経路の一つだ。

2022年のアウトブレイクでは、ウイルスはほとんどが性的接触によって広がった。

DRCでの現在の流行は、性的接触やその他の密接な接触によって引き起こされている。

このウイルスは、幼い子どもを含む、感染リスクの高いコミュニティーでも発見されている。

感染リスクが高いのはどんな人か

発症者との濃厚接触があれば、医療従事者や家族を含め、誰でもウイルスに感染する可能性がある。

感染した大人同士の性的接触は、感染者が増加している理由の一つと考えられている。

専門家らは、誰が最も危険にさらされているかを理解するため、状況を調査している。

幼い子どもは、特に被害を受けやすいグループに入る可能性がある。免疫系が発達途上であることに加え、この地域の多くの子どもたちは栄養状態が悪く、病気を撃退するのが難しいためだという。

子どもたちは遊び方や互いへの接触が密接なため、リスクが高いのではないかと指摘する専門家もいる。

過去に天然痘ワクチンを接種した人の一部は、エムポックスについても免疫を持っている可能性がある。しかし、40年以上前に集団接種が終了しているため、現在の子供たちにはこうした保護もない。

他にも、免疫力が低下している人はこの病気にかかりやすく、妊娠中の女性はよりリスクが高いことが懸念される。

エムポックス感染者との密接な接触を避け、ウイルスが地域内に存在する場合は石けんと水で手を洗うことが推奨されている。

また、エムポックスにかかった人は、病変がすべて消えるまで隔離するべきだという。

WHOは、回復後12週間は、性行為をする際には予防のためにコンドームを使用すべきだと指導している。

ワクチンはあるのか

ワクチンは存在するが、通常はリスクのある人や感染者と密接に接触した人しか接種できない。

現在、必要な人すべてにワクチンが行き渡るだけの十分な資金がないことが、大きな懸念となっている。

WHOは先に、製薬メーカーに対し、たとえワクチンが正式に承認されていなくても、緊急用としてエムポックス・ワクチンを提供するよう要請した。

アフリカCDCが、大陸全体に公衆衛生上の緊急事態を宣言したことで、各国政府は対応策を調整しやすくなり、感染地域への医薬品や援助の流入が増加する可能性が期待されている。

一方で、世界的な取り組みがなければ、現在の流行がアフリカ大陸を超えて拡大することが懸念される。

(英語記事 What is mpox and how is it spread?

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c1d7n3vdr1do


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