有権者の両氏に対する印象は……
米有力紙ワシントン・ポストとABCテレビおよび調査会社イプソスの全国共同世論調査(8月9~13日実施)によれば、バンスに関して32%が「肯定的印象」、42%が「否定的印象」と回答し、「肯定」が「否定」を10ポイント下回った。一方、ウォルズについては、39%が「肯定的印象」、30%が「否定的印象」と答え、逆に「肯定」が「否定」を9ポイント上回っている。有権者は、バンスよりも「動的」で「喜び」と「寛大さ」や「親切」をアピールするウォルズに肯定的な印象を抱いている。
また、トランプのバンス選択について、45%が「支持」、50%が「不支持」と答え、「支持」が「不支持」を5ポイント下回った。トランプには、中西部の白人労働者の票の獲得という明確な狙いがあった。その上トランプは、バンスは自分よりも目立たなく、忠誠心があると判断したのかもしれない。しかし、有権者はトランプの選択を目下のところ、評価していない。
他方、ハリスのウォルズの候補の選択に関しては、52%が「支持」、44%が「不支持」と答え、「支持」が「不支持」を8ポイント上回った。有権者は、副大統領候補の選択においてハリスの方が良い選択をしたとみている。
バンスの「弱み」は、女性有権者における好感度が低いことだ。過去に、米FOXニュースとのインタビューで、子どものいない女性を「猫おばさんたち」と表現し、「みじめな人生を送っている」と発言した。加えて、「民主党の未来は、カマラ・ハリスやピート・ブティジェッジやAOC(アレクサンドリア・オカシオ・コルテス)といった子どものいない人たちにコントロールされる」という「差別的な発言」をした。
これが、ハリス陣営の攻撃材料になっている。同世論調査では、女性におけるバンスの好感度から非好感度を引いた差が、マイナス8ポイントであった。逆に、ウォルズはプラス9ポイントで女性の間で、バンスよりも好感度が高い。子どものいない人のバンスに対する好感度は、マイナス10ポイントで以外に低かった。
世論調査で定評がある米クイニピアック大学が激戦7州の中で、最も選挙人が多い(19)ペンシルベニア州の有権者に限定して調査(8月14日発表)を実施したところ、バンスに関して33%の女性が「好感が持てる」、50%が「好感が持てない」と答え、「好感」が「非好感」に対して17ポイントも低かった。これでは、同州においてバンスはトランプの「助け」にならない。バンスの過去の子供のいない女性に対する蔑視の発言が、女性の間で不人気の一要因になっているとみてよい。
ちなみに、ウォルズについては、ペンシルベニア州の40%の女性が「好感が持てる」、24%が「好感が持てない」と回答し、「好感」が「非好感」を16ポイントも上回り、同州の女性票獲得を目指すハリスの「助け」になっている。
トランプは批判の的になったバンスを擁護したが、メディア等からの批判が収まらないと、「副大統領候補は選挙に影響を及ぼさない」と本音を漏らした。当のバンスも、トランプのこの発言を容認した。これとは対照的に、ハリスとウォルズはチームとして「一体感」のある選挙戦を戦っている。