2024年8月23日(金)

BBC News

2024年8月23日

タイの疾病管理当局は22日、従来より致死性の高いエムポックス(サル痘)ウイルスの感染を、国内で確認したと発表した。アフリカ大陸外での感染確認は2例目で、アジアでは初。

タイの疾病管理局によると、感染が確認されたのは66歳の欧州出身の男性。14日に、アフリカの国からバンコクに到着した。国名は公表されていない。

男性は翌日から症状が出始め、すぐに病院へ向かったという。その後、「クレード1(コンゴ盆地系統群)」と呼ばれるエムポックスウイルスから派生した「クレード1b」に感染していることが確認された。

エムポックスウイルスには大きく分けて「クレード1」と「クレード2(西アフリカ系統群)」の2種類があるが、「クレード1」の方が致死性が高い。

昨年から、アフリカのコンゴ民主共和国(DRC、旧ザイール)を中心にアウトブレイク(大流行)が発生。コンゴ民主共和国では少なくとも450人が死亡している。

その後、ブルンジやケニア、ルワンダ、ウガンダなどでも感染が確認されている。

コンゴ民主共和国の東部で確認された「クレード1b」は現在、国境地帯や近隣諸国に広がっている。

1週間前にはスウェーデンで、アフリカ大陸外で初めて「クレード1b」感染者が確認された。スウェーデンの公共衛生当局は、男性が最近、アフリカ諸国に滞在していたと説明した。

そして今回タイで、「クレード1b」の感染がアジアで初めて確認された。

ワクチンや予防策は

エムポックスは性行為や皮膚病変(発疹部位)への接触、ほかの人と近い距離で会話や呼吸をするなどの濃厚接触によって感染するが、新型コロナウイルスやはしかなどのような感染力はない。

しかし現在、変異により「クレード1b」と呼ばれる派生型が生まれ、以来急速に感染が広がっている。この変異株は「これまでで最も危険なもの」だと指摘する科学者もいる。

アフリカの一部地域でこの変異株がまん延していることや、その致死率の高さから、科学者の間では懸念が広がっている。世界保健機関(WHO)は14日、エムポックスのアウトブレイク(大流行)について「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した

エムポックスに対する認識を広め、濃厚接触者を追跡し、ワクチン接種で感染予防をすることで、アウトブレイクは抑制できる。ただし、ワクチンは感染リスクがある人や、感染者と濃厚接触した人しか受けられない。

アフリカではワクチンが不足しているが、来週あたりにコンゴ民主共和国に数百万人分が到着する予定。

タイ、「感染リスク国」からの渡航者の検査義務付け

アジア初の感染が確認されたタイでは、機内で感染者の近くに座っていた43人と、着陸後に感染者と接触した人たちを、疾病管理局が追跡調査している。

該当者は全員、21日間の観察を受ける。

タイはまた、42カ国の「リスクがある国」からの渡航者を対象に、到着時の検査を義務付けた。

エムポックスはインフルエンザのような症状や皮膚病変を引き起こす。ほとんどの場合は軽い症状で済むが、命に関わることもある。

中央アフリカでまん延している変異株「クレード1b」は従来より致死率が高く、100人に4人が死に至ると考えられてる。

エムポックスは、西アフリカや中央アフリカの熱帯雨林で最もよく見られ、毎年数千人が感染している。

2022年には、比較的症状の軽い「クレード2」による感染拡大を受け、WHOが緊急事態を宣言した。現在も多くの国で「クレード2」の感染者が出ている。

(英語記事 Thailand confirms first Asian case of new Mpox strain

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cvg5n6jgpl0o


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