ジョンズホプキンズ大学高等国際関係大学院のバジョグリ助教授とナスル教授が、Foreign Affairs誌電子版の7月29日付け論文‘A More Normal Iran?’で、7月5日のイランの大統領選挙に勝利した改革派のマスード・ペゼシュキアンがイランを変え得るのかを論じている。主要点をごくかいつまんでご紹介すると次の通り。
多くのアナリストは、ペゼシュキアンの勝利をさして重大事とは思っていない。ペゼシュキアンは余りに弱く、ハメネイに手を縛られているからである。ペゼシュキアン自身、過激な変革に関心を持っていないようでもあり、以前の改革派の大統領とは違って、彼はハメネイに忠誠を誓っている。
にもかかわらず、将来の歴史家は2024年選挙をイランが決定的に変わった瞬間として位置づけるかも知れない。ペゼシュキアンが大幅な改革を追及したからではなく、彼が穏健なイスラムの政権を作り得たことがその理由である。
彼はイランには穏健な改革派と穏健な保守派から成る連立が存在し得る空間があることを示した。選挙戦ではペゼシュキアンは人々の日常生活の改善を目指す小さな社会・経済改革に焦点を当てた。米国との外交の刷新はより困難であろうが、交渉を支持するよう、そして控えめな核についての合意を承認するようハメネイを説得することは出来る。
ペゼシュキアンは、当選以来、優先事項は良いガバナンスと「橋渡し」であることを明確にしているが、いずれも変革的な政治改革を要する訳ではない。彼は政府を改革派と保守派の双方で構成することを欲している。
政府が発足すれば、ペゼシュキアンは経済改善の圧力に直ちに当面するであろう。そのために、彼は赤字予算、財政の乱脈、経済的欠乏、水と耕地の不足の原因となっている慣行――例えば、一定の既得権益に流れる補助金――を変えることを約束している。
けれども、国内的な改革で経済に出来ることには限界があろう。イランは投資を死活的に必要としているが、西側がその制裁を緩和しないことには可能でない。その目的で、ペゼシュキアンはイラン経済の改善のためには和解が必要だとして米国との真剣な外交上のエンゲージメントを強く主張した。