2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年8月6日

 ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙の7月18日付社説‘Biden Gives Iran Another Sanctions Break’は、バイデン政権がイラクの10億ドルの凍結資金のイランへの支払いを認める一方でイスラエル人に対して制裁したが、同政権の中東政策は麻痺している、と批判している。要旨は次の通り。

イスラエルのネタニヤフ首相(左)と会談する米国のバイデン大統領(AP/アフロ)

 7月17日、バイデン政権は対イラン制裁の免除を認めてイランが10億ドル以上の凍結資産を手に入れられるようにした一方で、イスラエル国民に対して制裁を行った。

 このような対イラン宥和政策で米国は何を得るのだろうか。バイデン政権の関係者は、イランの核開発を一時的に休止させているとささやいているが、WSJ紙は、真逆だと考えている。

 イランは、高濃度の濃縮ウランの備蓄を増やし、国際原子力機関(IAEA)の査察官を退けている。同じく17日にAxios(注:新興インターネット・メディア)は、バイデン政権はイランが核兵器の製造に着手した事に対して「深刻な憂慮表明する」旨の書簡をイランに送ったことを報じている。

 このような凍結資産の解除により(イランを大人しくさせて)中東地域を平穏にするという期待もある。しかし、WSJ紙は、やはり効果は真逆だと考える。

 イランが資金援助し、武装化し、訓練し、そして指図しているハマスがイスラエルに対する戦争を開始し数十人の米国籍者を含む1200人のイスラエル人を殺害し、いまだに5人の米国籍保有者を人質にしている。また、別のイランの代理勢力も米軍を攻撃している。そして、4月13日にはイランは、イスラエルに対して130発の弾道ミサイルを発射したが、バイデン大統領はイスラエルに対して報復しないよう求めた。

 さらにレバノンのヒズボラが、絶え間なくイスラエルを攻撃していることはより大規模な戦争へのリスクを高めている。イランは、その代理勢力に攻撃を止めさせる必要がある。しかし、どうしてイランに資金を与え、イスラエルにうるさく言うのか。


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