2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年8月6日

 イスラエル人に対する米国の最新の制裁は、元イスラエル兵のエロール・アザリアに対するものである(注:詳細については後述する)。なぜバイデン大統領は、あたかもイスラエルが同盟国ではなく、イスラエルに対して尊重されるべき主権と正義が無いかのように制裁を行うのか。

 昨年10月7日のハマスによる大虐殺とその後の出来事により全ての状況が変わったのにもかかわらず、バイデン大統領の中東政策は、麻痺している。サリバン国家安全保障問題担当特別補佐官は、10月7日の直前、ある雑誌に「中東地域は、ここ数十年間で一番平穏だ」と書き、さらに、「われわれは、イランがこれ以上の侵略を行わない様に外交政策と組み合わせて抑止力を高めている」と寄稿している。

 しかし、それとは真逆にイランが黒幕の戦争が起きており、米軍と商船に対する攻撃が起きている。何時になったらバイデン大統領のその補佐官達は、彼等の失敗を自覚し、政策を変更するのであろうか。

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米国がイラク制裁を免除した事情

 WSJ紙の中東に関する社説は、時々、感情的であり、恣意性を感じる。今回の社説も、バイデン政権のイスラエルに対する冷たい姿勢とイランに対する脅威認識の甘さを批判するために意図的に事実関係を歪曲しているように思われる。

 まず、バイデン政権がイラク関連の10億ドルの凍結を解除したことを非難している。しかし、イラクは世界第5位の石油産油国だが、イランから消費電力量の40%を輸入しており、国内で発電に用いられる天然ガスの半分近くもイランに依存していて、電力についてイランにコントロールされているという実態がある。

 つまり、イラクの安定性を維持するという見地からは、イランからの電力とガスの輸入を止める訳にはいかず、イランに代金を払わざるを得ないが、イラク戦争で多大の犠牲を払った米国としても電力不足でイラクを崩壊させてしまう訳には行かないので制裁の免除を認めざるを得ないという事情がある。


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