2024年6月18日(火)

教養としての中東情勢

2024年5月29日

 パレスチナ自治区ガザを無差別攻撃するイスラエルの国際的孤立が一段と深まってきた。しかし、ネタニヤフ首相は「外部から圧力や批判を受ければ受けるほど結束する」というユダヤ民族の特性を巧みに利用、政治生命の存続を図っている。世界からの孤立を味方に付ける首相の権謀術数には舌を巻く。

イスラエルのネタニヤフ首相は、ガザでの紛争をめぐる国際的な批判を、自身の政権継続に利用している(ロイター/アフロ)

“いじめ”をチャンスに変える

 イスラエル軍とガザのイスラム組織ハマスとの戦争は間もなく8カ月が経過しようとしている。パレスチナ住民はイスラエル軍に追い立てられ、ガザ最南部のラファに150万人が退避していた。しかし、軍の攻撃激化で85万人が同地を離れた。本格侵攻が始まれば、犠牲者が急増するのは必至だ。

 5月26日には軍がラファの避難民キャンプ地を空爆し、45人が死亡した。軍はハマス戦闘員2人を殺害したとしているが、ほとんどが子どもも含む住民だ。首相は「偶発的な悲劇」と他人事のように釈明したが、何度こうした事態を繰り返せばいいのか。パレスチナ人の死者は約3万5600人に上る。

 イスラエルに唯一影響力を持つ米国のバイデン大統領はラファに本格侵攻すれば、攻撃兵器の供与を停止するとけん制したが、首相は耳を貸そうとしない。逆に「必要なら爪で戦う」「単独でも立ち向かう」と強く反発している。だが、イスラエルの容赦のない攻撃に、国際社会の非難は高まる一方だ。

 反イスラエルの動きとしては、国連総会で143カ国がパレスチナの国連加盟を支持する決議案を採択したし、国際刑事裁判所が戦争犯罪容疑でネタニヤフ首相とガラント国防相の逮捕状を請求した。国際司法裁判所もラファへの攻撃停止を命じる仮処分を出した。米大学のキャンパスでは反イスラエルの抗議行動が吹き荒れ、トルコはイスラエルとの貿易停止を発表した。

 まさにイスラエル包囲網といったところだが、ナチスによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)など迫害されてきた歴史を持つユダヤ人にとっては、国際的な非難はその延長線上と映る。最初にハマスから残虐な襲撃を受けたのはイスラエルなのに、世界はそれを忘れ、“ユダヤ人いじめ”に走っている。これがイスラエル国民大勢の受け止め方だ。


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