敵に囲まれてきたイスラエルは男女とも18歳以上による皆兵制度を採用しているが、例外としてユダヤ教の「超正統派」の徴兵が免除され、宗教学校にも補助金が支給されてきた。ところがイスラエル最高裁が3月、補助金支給の停止の判断を示したことなどから首相はこの問題に対処せざるを得なくなった。
閣内の世俗的な政党は「超正統派」にも徴兵を課すべきだと主張、14議席を保有する宗教政党は「超正統派」の兵役免除と補助金の継続を要求した。首相にとっては大きなジレンマ。「超正統派」に徴兵制を課せば、宗教政党が政権を離脱する恐れが強い。そうなれば、政権は議会の過半数を割り、崩壊してしまう。
窮地のネタニヤフに秋波を送るのは
以上述べてきたように、ネタニヤフ首相は内憂外患の窮地にある。こうした綱渡りの首相に最近、秋波を送ったのが米下院のジョンソン議長だ。首相を招待し、議会での演説を要請したからだ。首相も受諾したため、近く訪米するとみられているが、かつても同じことがあった。
2015年、当時のオバマ政権の進めるイラン核交渉に猛反対し、孤立していた首相が下院議長の招待を受け、議会で演説したことがある。しかし、首相はワシントン入りしてもオバマ大統領とは無視するように会わなかった。
今度もバイデン大統領とは会わない可能性が強い。だが、今回は事情が異なる。ジョンソン下院議長を操っているのがバイデン氏の政敵トランプ前大統領とみられているからだ。