2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年8月6日

 他方、エロール・アザリアのケースだが、2016年の6月に2人のパレスチナ人がイスラエル兵をナイフで襲い、負傷させた。襲撃したパレスチナ人の内、1人が射殺され、残りの1人が重傷を負って拘束されたが、衛生兵だったエロール・アザリアが(恐らく手当を命じられたにも関わらず)殺害したという事件である。

 軍事法廷で裁かれたが「殺人罪」ではなく、「殺意の無い殺人」で起訴され18カ月の禁固が宣告され、9カ月後に仮釈放されている。この対応に対してパレスチナ側のみならずアラブ連盟や国連人権高等弁務官事務所も過度に甘い対応だと非難した。

 恐らく、米国がエロール・アザリアへの査証発給を拒否したのは、こういう国際的な関心の高さに配慮したものであろうが、こういう経緯を考えるならば、この件についてもバイデン政権を非難するのは如何なものかと思われる。

イランは核兵器製造しているのか

 この社説で一番気になるのは、イランが核兵器の製造に着手したことに対してバイデン政権がイランに警告の書簡を密かに送ったという新興ネット・メディアのAxiosの記事(Scoop: U.S. privately warned Iran over suspicious nuclear activities、2024/07/17)である。仮にイランが核兵器製造に踏み切ったとすればこれは本当に深刻な問題だ。

 イランでは改革派が大統領選挙で勝利したが、核開発は最高指導者の直轄事項であり、西側諸国との関係改善を訴える新大統領でも口は出せない。

 いずれにせよ、本当にイランが核武装に舵を切ったとすれば、イスラエルと米国は、イランが核兵器を実戦配備(弾道ミサイルへの実装)する前に阻止しようとする可能性が高い。

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