2024年12月7日(土)

教養としての中東情勢

2024年7月9日

 イランに19年ぶりに改革派の大統領が誕生した。7月5日に行われた大統領選挙の決選投票で改革派のペゼシュキアン元保健相が保守強硬派のジャリリ元最高安全保障委員会事務局長を破って当選した。

イラン大統領選の決選投票で勝利した改革派のペゼシュキアン氏(ロイター/アフロ)

 その背景には、驕り高ぶった保守派が国民の怒りと不満をみくびり、誤算したことがある。今後は新大統領と保守派の激しい権力闘争が予想される。イラン新政権の行方を展望した。

勝因は女性票

 今回の選挙は大統領だったライシ師が5月、ヘリコプター墜落事故で死亡したことに伴って行われた。6月の第1回選挙では立候補した6人全員が過半数の得票に達せず、ペゼシュキアン氏とジャリリ氏の上位2人による決戦投票となった。結果はペゼシュキアン氏が53.6%を獲得、44.34%のジャリリ氏を破って当選した。

 ペゼシュキアン氏の勝因の1つは投票率が上がった点だ。第1回選挙の投票率は40%と国政レベルの選挙としては史上最低を記録した。イランの投票率は過去70%を超えていたが、3月の国会議員選挙では41%と急落。その背景には国民の間に「投票しても権力体制は変わらない」という“あきらめムード”がまん延しているためだ。

 だが、決戦投票では投票率が49.8%にまで上昇した。「あきらめムードから、もしかしたら変化が生まれるかもしれないという期待感に変わった」(中東専門家)。第1回投票でペゼシュキアン氏が1位になったものの、2位のジャリリ氏と3位のガリバフ国会議長の保守票を合計すれば、軽くペゼシュキアン氏を上回るとの予想を覆した。

 最も期待されたのは女性のヒジャブ(スカーフ)強要問題の解決だ。ライシ政権はヒジャブ強要に反対するデモを徹底的に弾圧、治安部隊の発砲などでこれまでに約500人が死亡、2万人以上が逮捕されている。


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