昨年11月以来、イエメンのフーシ派が紅海を航行する船舶を攻撃しているのに対して米国とその同盟国が安全航行を守るために艦艇を派遣しているが、バイデン政権は紛争の拡大を恐れてフーシ派への報復を制限している。これまでのところ艦艇に損害はないが、衝突が長引けば、その可能性が高まる。また、費用的にも問題がある。
ウォールストリート・ジャーナル紙はこのような趣旨の解説記事‘How an Iranian-Backed Militia Ties Down U.S. Naval Forces in the Red Sea’を6月12日付で掲載している。同記事の主要点は次の通り。
昨年10月7日のハマスのイスラエル攻撃以来、イランが支援するイエメンのフーシ派は、商船や軍艦に対し毎日のようにドローンやミサイル等を発射している。フーシ派の攻撃は効果的ではないが船舶の安全航行を妨げ、米国とその同盟国の海軍力を釘付けにしている。
紅海からスエズ運河にかけては世界的に最も利用されている航路の一つであり、紅海の入り口であるバイブ・エル・マンディブ海峡はフーシ派のミサイルとドローンの射程圏内にある。
これまでのところ、フーシ派による80回の攻撃にも関わらず、軍艦へのダメージはないが、間一髪の危機は起きており、衝突が続けば、この海域に軍艦を派遣している米国と同盟国にとって危険な状況(艦船へのダメージ)が起きる可能性がある。
他方、バイデン政権は、中東のより大規模な紛争に巻き込まれるのを避けるためにフーシ派に対する報復を制限している。しかし、それは、米国と同盟国の艦隊が何週間も何カ月もの間紅海をパトロールし続け、そしてそれに対する攻撃が続くことを意味する。
米国と他の諸国は、フーシ派の発射するミサイルとドローンを迎撃しているだけでなく、フーシ派が使った発射施設、レーダーなどを空爆しているが、ヘインズ米国家情報長官は、5月、米議会で米国が主導する(紅海の航行の安全を守るための)取り組みは過激派(フーシ派)の船舶攻撃を阻止するのに不十分であり、この脅威は、「当面続く」と証言した。