2024年11月25日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年7月3日

衝突を止めることは困難

 この記事は、バイデン政権は米国が中東での大規模紛争に巻き込まれるのを避けるためにフーシ派に対する反撃を抑制していると書いているが、その一方で、米軍が大規模な報復攻撃を行えばフーシ派の船舶攻撃を止めさせることが出来るのかと言えば、それも疑問だ。

 2015年に始まったイエメン内戦では、サウジとアラブ首長国連邦(UAE)が軍事介入してフーシ派を激しく空爆したが、フーシ派は怯まず、やがてイランの支援で弾道ミサイルやドローンを手に入れると逆襲に転じ、両国の石油施設等を攻撃したために、根を上げて事実上の撤退を強いられている。昨年3月の中国の仲介によるサウジとイランの関係修復の隠れた目的は、これ以上フーシ派がサウジ本土を攻撃しない事だったと思われる。

 サウジとUAEは米軍でも現役のF-15やF-16を供与され、インテリジェンスの提供も受けていながら、フーシ派に対してダメージを与えられなかったことから、恐らく、世界最強の米軍でも空爆のみでフーシ派の攻撃を止めさせることは困難なのではないか。しかし、地上戦は、元から論外であろう。

 イエメン内戦当初、サウジとUAEは最新の武器で身を固めた陸上兵力も展開したが、フーシ派の民兵に一瞬で粉砕され、全く歯が立たなかった。仮にこの両国よりも遙かに能力の高い米軍が地上兵力を展開したとしても、少なからぬ犠牲者が出ると想像される。

 大統領選挙の年に中東で多数の米軍兵士の死傷者が生じる事態こそ、再選を目指すバイデン政権にとり絶対に避けなければならない事態であり、バイデン政権としては報復攻撃を抑制する他あるまい。

 従って、当面、衝突がだらだらと続いていくのはないかと思われるが、武器弾薬の供給問題を抱える米国にとって分が悪いように思われる。さらに、いずれ米軍艦船に被害が生じてバイデン政権がにっちもさっちも行かない状態に追い込まれる可能性が懸念される。

 他方、イランにとりフーシ派に米海軍を消耗させることは、ハマスを支援しているというポーズを見せつつ、溜飲を下げる効果があるのでフーシ派支援を止めないであろう。その意味で国際的関心は低下しているが、深刻な問題を抱えている衝突だと言える。

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