2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年3月20日

 元米海軍副次官でヨークタウン研究所理事長のセス・クロプシーが、2月27日付けウォールストリート・ジャーナル紙掲載の論説‘The U.S. and Israel Play Into Iran’s Hands’で、イランは米国を追い出して中東の覇権を握ろうとしており、今回のガザの衝突は単なるイスラエル・パレスチナ紛争の再開ではなく、その後ろにはイランがいるので、米国とイスラエルは真剣にイランの脅威に対処しなければならないと論じている。要旨は次の通り。

(Vladimir Koval/gettyimages)

 イスラエルがガザのより深くに侵攻し、ヒズボラと戦端を開く準備をしている最中にイラン側のイスラエルと米国に対する戦闘も転機を迎えている。イスラエルと米国は、代理勢力を手足として用いるイランを真の敵であると認識するべきである。イランの代理勢力に対する米軍の空爆等ではなく、両国はイラク、シリア、レバノンにおけるイランの力を崩壊させなければならない。

 2021年以来、ハマスはイランが「抵抗の枢軸」と呼ぶ東地中海、レバノン、イラク、イエメンを結ぶ代理勢力のネットワークに完全に組み込まれている。これらの代理勢力は敵視するイスラエルと米国に対して団結していて、ハマス、パレスチナ・イスラム聖戦機構、ヒズボラはイランの革命防衛隊の監督の下で繰り返し行動している。イランとその代理勢力の脅威は、米国のみならず欧州、アジアにとって現実である。

 イランの目標は、イスラム革命の輸出を通じて地域的な覇権を中東で握り、ユーラシア大陸で欧州、ロシア、中国、インドと対抗し、米国に対して軍事的、政治的、経済的に挑戦することだ。このようにイスラエルの(ハマスとの)戦いは、大きな地政学的な意味を有するが、バイデン政権は単なるガザでの新たな衝突と見なし、紅海やイラク、シリアでの代理勢力による攻撃を余波だと考えている。これこそイランの思う壺だ。

 イランは、米国が中東にいる限り米国との通常戦争で勝ち目が無く、イスラエルを物理的に征服出来ないので、米国に中東はあまりにも面倒なので中東から撤退するべきだと信じ込ませようとしている。そして、米国が中東から撤退すれば、イランは、イラク、シリア、レバノンを一つの戦域とし、さらに西岸地区を組み入れ、ヨルダンを不安定化させ、さらに、代理勢力を使ってイスラエルを攻撃出来るようになり、最終的にイスラエルに普通のユダヤ人が住めなくなるだろう。しかし、イスラエルも米国もこのような事態を阻止しようとしていない。


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