2024年5月11日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年3月20日

 パレスチナ問題は風化が進んでいるが、それでも数カ月で3万人のガザのパレスチナ人が殺されるという大惨事の前では、サウジアラビアをはじめとするアラブ産油諸国の指導者が世代交代により、アラブの大義(パレスチナ問題)より自国の国益を優先しようとしても情緒的な国民の反発を招くので不可能だということである。

続くフーシ派の紅海での“妨害”

 なお、米軍が大規模な報復を行って以来、フーシ派を除いて代理勢力は大人しくなった様に見えるが、3月1日のイランの国会議員選挙が終わるまでイラン側が内政で忙しかった可能性があるので、これで代理勢力の挑発が止まったと見るのは時期尚早だ。

 さらに、3月2日、フーシ派の攻撃で初めて商船が沈没したが、同派の船舶攻撃がますます紅海の安全航行を脅かしていることには要注意であろう。フーシ派は空爆で屈服しない可能性が高いが、米英には空爆以上のオプションは無く、手詰まり感がある。スエズ運河の航行料が主要外貨収入の一つであるエジプトの経済状況の悪化も懸念される。

 イスラエルがヒズボラの攻撃を止めるために6月にもレバノン侵攻作戦を行うという観測が出回りだした。ガザの衝突が続く中で非常識に見えるが、ユダヤ国家の安全を脅かす存在は許さないというイスラエルの国是からすれば、起きてもおかしくないと考える。

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