2024年10月5日(土)

教養としての中東情勢

2024年7月9日

 妻が交通事故で死亡するという悲劇に見舞われたが、再婚せず子供たちを一人で育てた。選挙戦では常に、長女が共に街頭に立った。

立ちふさがる革命防衛隊

 今後の焦点はペゼシュキアン新政権になってイランに変化が見られるのかどうかだ。「イスラム聖職者が国の最高指導者となる」という体制自体が変わることはなく、大統領はあくまでもナンバー2の存在。特に安全保障や外交などでは最終的な決定権を持つのは最高指導者のハメネイ師だ。

 ペゼシュキアン氏は当面は内政問題、特にヒジャブ強要の緩和、街頭取り締まりの風紀警察の解体、インターネット規制の解除などに集中することになるだろう。公約した経済の回復、そのための核合意再建協議の強化と米制裁解除交渉といった外交問題はなにをやるにしてもハメネイ師の承認が必要だ。

 だが、ハメネイ師も経済の回復を求める国民がペゼシュキアン氏を支持した現実を無視はできない。ペゼシュキアン新大統領はまずは停滞中の核合意再建協議を再開する了解をハメネイ師に求めることになる。だが、新大統領には国内外に2つのハードルが立ちはだかっている。

 国内的には米欧との融和路線や核合意再建に反対する保守勢力、特に革命防衛隊との対決だ。ロウハニ元政権のように、革命防衛隊にスキを突かれないよう、ハメネイ師をうまく立てながらの綱渡りの政権運営になる。同師周辺の強硬派は最近、核武装論を公然と唱えており、難しい舵取りが要求される。

 対外的には再建協議を主導してきた米国のバイデン大統領が失墜しつつあるのが痛い。仮に11月の米大統領選挙でトランプ前大統領の復活になれば、再建協議どころか、新たな制裁が科される可能性があり、そうなれば、ペゼシュキアン新大統領の思惑とは逆に、欧米との融和路線は吹っ飛び、米国との対決論が勢いを得ることになるだろう。厳しい前途が待ち構えている。

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