2024年11月23日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年8月23日

 イランの外交政策を変えることは、それが大体においてハメネイと革命防衛隊の領分であるので難しいであろう。しかし、核外交に何のインパクトも与えられないということではない。

 ハメネイは核プログラムの拡大を承認したが、イランに対する制裁圧力を減じ得るのであれば、交渉することには満更でもない。ハメネイはウィーン協議のライシの企てを支持し、2023年には米国との間で秘密のディエスカレーションの合意を成し遂げた経緯がある。

 ペゼシュキアンの政策転換の結果は、もちろん、米国がエンゲージメントに応ずるかにかかっている。米国は彼がどの程度動く余地を有しているかをテストすべきである。
米国の当局者は彼らが思っている以上にペゼシュキアンが自由を有していることを発見するかもしれない。彼はハメネイの支持を有している。

 もちろん、ハメネイの支持はペゼシュキアンがイスラム共和国という体制の人間であることを意味する。彼がハメネイを裏切ることはない。彼の目標は安定した政治秩序を作り出すことである。しかし、過激な変化でないにしても、変化は重要な影響を持ち得る。

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米国も冷淡な対応

 先のイラン大統領選挙における改革派のペゼシュキアンの勝利の経緯、彼の特質、そして選挙を巡る四囲の状況に関する筆者の観察は客観的で的確なものと考えられる。ペゼシュキアンはハメネイの絶対的権力に服す、あくまでも体制内の人間であり、従って、彼の行動の自由には限界があることに留意しつつも、彼が目指す改革は現体制の枠内に十分収まり得るはずのものである、と指摘している。

 彼が目指すのは国民の日常生活の改善のための小さな社会・経済改革であり、そのための実際的な政治である。そして、経済の立て直しのために、西側の制裁の緩和を実現すべく西側とのエンゲージメントを目指している。彼の改革は過激な変化ではないが、イランの今後に重要な影響を持ち得る、と論じている。

 この先、ペゼシュキアンが指向する方向に事態が進展するか否かは分からない。彼の改革がイランの将来、特に、その対外関係に及ぼす潜在的なインパクトにどれほどのものがあるかは予測の限りではない。


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