もう一つは、個々の開発プロジェクトに銀行が融資しやすくなるということだ。在来地熱は十分な熱水が地下にあるとされていても、長期間にわたり減衰せずに利用できることの評価が難しく、米国では銀行が地熱発電に融資しにくいという状況があった。しかし、次世代地熱は地下のリスクが極めて小さくなるので、銀行が融資しやすくなり開発スピードも速くなることを示している。
国家の存亡をかけて
地熱技術大国を目指せ
前出の片瀬氏は「次世代地熱の採算性を確立するためには掘削コストの大幅な低減などの技術課題がありましたが、米国は、これらの技術課題はほぼ解決の見通しが立ちつつあるとし、24年から50年まで、2年ごとの発電量の具体的な導入見通しを掲げ、本気で次世代地熱を推進しようとしています。日本も覚悟次第で、『地熱革命』のリーダーになることは可能ですが、そのためには、政府が将来のビジョンを明確に示して本気で取り組まなければいけません。
次世代地熱が実現すれば日本の地熱資源量が増加することは間違いない。第7次エネルギー基本計画で次世代地熱を前提として地熱発電の電源比率に関する野心的な目標を掲げ、官民が全力で地熱開発を進めていかなければ日本の国益を損ないます」と話し、こう強調する。
「今、米中が開発競争を行っている汎用人工知能(AGI)のトレーニングには、AGI一つで10GWの電力が必要だといわれています。日本が先進国であり続けることはもとより、国家の安全を確保するためにも日本発のAIの開発も不可欠であり、大量の低炭素の電力を何としてでも確保しなければいけません。これは既設の原発再稼働や運転延長だけでは不十分です。新増設には15年から20年以上かかるため、その間に世界のAI開発競争から取り残されてしまいます。
『電力は国家なり』ともいうべき状況下で、日本の将来の戦略的な位置付けを決定的に左右するのは、地熱技術大国になれるか否かです。単なるエネルギー安全保障という視点だけではなく、国家の存亡をかけて、地熱発電を推進すべきです」
純国産エネルギーである「地熱」のポテンシャルを活用しないという選択肢はあり得ない。従来の延長線上の議論や発想ばかりでなく、今こそ日本の将来を見据え、英知を結集し、〝覚悟の火〟を灯すべきだ。