見るべき「非公式」の見解
国際金融市場とは何か――。東京ディズニーランドのガイドブックには、公式もあれば非公式もある。ここからは「非公式」ガイドブックを見ていきたい。非公式とはいえ、本当に役立たなければ、だれも見向きもしない。
NHK「おはよう日本」がまとめた市場の声も、植田日銀総裁の国会における意見聴取も、浜田宏一氏のアベノミクスの戦略意図も「公式」ガイドにみえる。
国際金融の筆者の非公式ガイドブックは『赤い盾』(集英社文庫、全4巻・広瀬隆著)である。
この作品は、金融王国ロスチャイルド家の数百年にも及ぶ歴史と、この王国にかかわった10万にも及ぶひとびとの家系つまり親族関係を探った超大作である。
「財界鬼検事」と呼ばれた三鬼陽之助氏は、経済事件が起きると自分で作った日本の上層部の家系図を引っ張り出しては、事件の真相がほぼわかったと伝えられている。三鬼は雑誌「財界」の創業者として、筆誅を加えるとともに、「財界の相談役」ともいわれていた。日本で現在発行されている政治経済情報誌の多くは、「財界」の編集部から袂を分かった人々が新たに立ち上げたものが多い。
さて、「赤い盾」は、国際金融の頭脳は依然としてロンドンのシティにある、と指摘している。金融取引の多いニューヨークのウォール街ではない。
それは、フランクフルトのユダヤ人ゲットーに閉じ込められて金融商売していた、初代のマイヤー・アムシェル・ロスチャイルドの5人の息子がロンドンなど欧州に散って金融業を営み、米国の金融業とも婚姻関係によってつながりをつけていく。
ロスチャイルドのマークである「赤い盾」の5本の矢は、この5人の息子が一致団結することを求めている。
ロスチャイルドの「赤い盾」のメンバーは、各国政府の戦費の調達や富豪の資金運用などに登場する。戦争の裏には金融がある。
金の価格を決めているのは、シティの5つの家の子孫たちである。世界のダイヤモンドの採掘権と実質的な価格を決めているのは1社である。
「日経 モーニングプラス FT」(8月19日)が、金の高騰について特集を組んだのは賢明である。解説に加わったのは、マーケット・ストラジィ・インスティチュート代表取締役の亀井幸一郎氏である。
金ドル交換停止のニクソンショックを経て、2000年代になると国際通貨基金(IMF)は金を「コモディティ」とした。つまり原油や穀物などと同様の商品となった。
しかし、ITバブルの崩壊やリーマンショック、コロナの感染拡大のときに金価格は上昇した。金は「通貨性」が復活し、「無国籍通貨」と呼ばれるようになった。
最近の上昇は、中国人や中東の中央銀行による買い上げが価格を押し上げている。基軸通貨のドルからのリスクを避けようとしている意図が見える。