なぜ、人口1000万人に過ぎないUAEがこのような冒険主義的な介入を試みているのだろうか。UAEには、アフリカ全土に顧客ネットワークを構築し政治的なイスラム主義(イスラム過激派)を打倒すること、紅海における影響力を拡大すること、鉱物から物流、農業等あらゆる分野で商業的利益を追求するとの戦略があり、スーダン支援はその一部である、と報じられている。
この背景には、歴史的、地理的、文化的なアラブ世界とこの地域の近接性、米国の中東離れにより生じたパワーバランスの空白に地域諸国が自己主張を始めたことがあり、脱石油時代へ向けての生き残り戦略とも言えよう。
ロシアも食指を動かす
同様の背景で、エジプト、トルコ、イラン、カタールなどは、スーダン政府およびSAFに肩入れしている。トルコは、最近ソマリアへの投資や大使館増設などアフリカへの経済的関与や影響力拡大に極めて熱心である。カタールはスーダン政府を金融面で支えているとも伝えられる。サウジアラビアは中立的な立場で和平交渉を主催するが全く進捗を見られず、これに不満なスーダン政府はイランに接近しているのだという。
ロシアのワグネルは当初RSFに地対空ミサイル等を供給し、金鉱山ビジネスでも提携したが、ブリゴジンの死後一時関与が薄れ、最近ではアプローチを変えてポートスーダンでの拠点建設と引き換えにSAFへの燃料や武器の供給に合意したとも伝えられる。すなわちイランとロシアは紅海岸での拠点確保がスーダン介入の1つの目的となっている。
加えてイランには、スーダン・イスラム勢力内に自らの代理勢力を育て、イエメン・フーシ派、ソマリアのアル・シャハブなどとの間にリンクを構築したいとの思惑があるのではとも疑われている。
スーダンの人道危機や崩壊を防ぐ鍵は、UAEが握っているように見える。大量の難民が出て困るのは欧州であり、また、テロの温床となる脅威やイラン、ロシアの紅海岸への進出は米国にとり見過ごせないはずであるので、人道的観点からも欧米が中心となって、スーダン問題で影の薄いサウジアラビアなども巻き込んで、UAEに圧力をかけ、事態をコントロール下に置くための努力が緊急に必要と思われる。