2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年1月23日

 2013年12月12日付National Interest誌で、Jeffrey W. Hornung米APCSS(アジア太平洋安全保障研究センター)准教授が、中国のADIZ設定は、国際規範に対する挑戦である、と批判しています。

 すなわち、11月23日、中国国防部は、東シナ海に防空識別圏(ADIZ)を設定することを一方的に発表し、地域の不安定情勢を更に悪化させた。

 国防部の規則によれば、ADIZを飛行する航空機は、ADIZ管理機構その他の指示に従い、中国当局に飛行計画を提出し、無線通信による連絡を起動・維持しなければならない。当局の要求に従わない航空機に対しては、中国軍が防御的緊急措置を執るとされている。スクランブルをかけると言うことであろう。

 ADIZを設定すること自体は、米、日など多くの国が行っており、自国の領空に入る飛行について飛行計画の提出を求めるのが通例である。しかし、中国は、中国の領空に入らずにADIZを通過するだけの飛行についても、飛行計画の提出を求めている。これは、中国が膨大な空域に影響力を及ぼす意向を示すもので問題である。更に問題なのは、中国のADIZが日本、台湾、韓国のADIZと大幅に重複していることである。その上、中国のADIZは、日本が実効支配している尖閣諸島や韓国が実効支配している離於島の空域まで含んでいる。

 中国のADIZが尖閣諸島上空を含む日本のADIZに大幅に食い込んでいる為、中国の狙いは、日本の尖閣諸島及びその上空の実効支配に挑戦することにより、日本に領土問題の存在を認めさせることに主眼があると論ずる向きが多い。しかし、そのような見方では不十分である。現実には、中国は3つの挑戦を突きつけているのである。

 第1の挑戦は、日本、韓国、台湾のADIZと大きく重複するADIZを設定することにより、3つの隣国に圧力を掛けることである。日本、韓国に対しては、何れの航空機に上空の飛行を許すかを中国が決めることにより、両国の島嶼に対する実効支配権を弱め、両国に領土問題の存在を認めさせること、台湾に対しては、独自のADIZは認めないと念を押すことを目指している。中国は、自国のADIZへの侵入を阻止する為に迎撃機を送り込むとの口実で、3つの隣国の実効支配を侵食することが出来る。何れかの隣国が中国の新しいルールを受け入れたり、反対しなくなったりすれば、中国の勝ちになる。


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