サウジアラビア、UAE、クウェートの3カ国は、いずれも、原油収入に国家の歳入を依存して国民にバラマキ福祉を行う、いわゆるRENTIER国家であるが、サウジアラビアは、21年の統計で約1000万B/Dの原油を生産しており、これはUAE(約366万B/D)及びクウェート(約274万B/D)の数倍である。他方、養うべき自国民の数はサウジアラビアが約2400万人で、UAEの約12万人、クウェートの約10万人に比較して極端に多いことが指摘出来る。
長年、サウジの国家予算は油価の低迷で財政赤字が続いており、油価を上げる事は、内政の安定のために至上の命題となっている。
蜜月とみられたサウジ・UAEにひび
油価を巡ってサウジアラビアとUAEとの間での緊張が高まっているように見えるが、このことは、最近までの両国関係を考えると大変興味深い。つまり、これまで、サウジアラビアの事実上の支配者であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子とUAEのムハンマド・ビン・ザイード大統領兼アブダビ首長の良好な関係から、サウジ・UAE関係は蜜月状態にあると見られていた。
例えば、2015年、イエメン内戦にサウジアラビアとUAEが軍事介入したのは、ムハンマド・サウジ皇太子のイニシアティブにムハンマド・アブダビ皇太子(現UAE大統領)がフォローしたとみられ、また、サウジとUAEがカタールと断交した(2017年~2021年)際には、ムハンマド・アブダビ皇太子のイニシアティブにムハンマド・サウジ皇太子がフォローしたと思われる。しかし、ここ1年程、この両者の不仲、そして、サウジ・UAE関係が緊張しているとの報道が散見されるようになっている。
これは、そもそも歴史的にサウジアラビアとUAEは、国境紛争等を抱えていて対立・緊張関係にあり、両国間の国民感情も決して良くなかったが、両国の指導者の個人的友好関係からこういった不協和音は封じ込められていたが、自己主張の強い独裁者の間の友情は、やはり、限界があったのであろう。こうして、油価を巡って両国間の緊張が高まっている。
市場の中東の地政学的リスクが低下したという判断から油価は下がっているが、ガザの衝突の終わりは見えず、フーシ派の船舶攻撃は続き、ヒズボラとイスラエルの対立の激化、そしてイランを巡る緊張は続いており、急な地政学的緊張により油価が高騰する可能性はある。