例えばUAEやイラクの様な産油国は、より増産したいと望んでいる。S&Pグローバル・インサイツ社の原油調査部門の責任者であるジム・バークランド氏は、今回の減産継続の発表前に、「増産は、(OPECプラス)の足並みを揃えるために必要であり、(OPECプラスとして)増産しなくても幾つかの加盟国が(勝手に)増産してしまい、ともかく原油生産は増えるだろう」というレポートを書いている。
油価が低下傾向にある中で、サウジアラビアは、少なくとも(OPECプラスが)自主減産を継続するというシグナルを出す必要があることについて他の加盟国を説得した。OPECの8加盟国の声明では、「より強い決意で(自主減産への)強固なコミットを新たにする」と述べているが、その一方で生産削減は、その後、毎月、徐々に緩和されていくであろうとも述べ、さらに、この減産緩和は、停止されたり、削減されたりするとも警告している。
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中東産油国の油価判断の基準
ここ数カ月間で油価が大きく低下している。9月7日現在の油価は68ドル/Bで2022年2月のロシアのウクライナ侵攻をきっかけに油価が115ドル/Bまで高騰し、当時、中間選挙を控えたバイデン大統領がサウジアラビアを訪問して原油の増産を要請したものの相手にされなかった状況と大きな様変わりだ。
その後、油価は徐々に下がって68ドル/Bまで下がり、昨年10月のハマスのイスラエル攻撃で再度、100ドル/B近くまで上昇したが、ガザの衝突が原油生産に大きな影響を及ぼさないでいる事から、原油をめぐる地政学的リスクの懸念は低下し、この記事が指摘するように、経済の不振による中国の原油需要の低下、非OPECプラス加盟国諸国の増産により再度油価が低下しているのが現状である。
なぜサウジアラビアが油価の高止まりを強く望み、UAE等が増産を重視するのかは、財政が赤字とならないレベルの油価(財政均衡油価と呼ばれる)が各産油国で大きく異なることに起因する。
国際通貨基金(IMF)の試算によれば23年5月時点でのサウジアラビアの財政均衡油価は80.9ドル/Bである一方でUAEは56.7ドル/Bの由であり、この事が両国の原油減産に対する姿勢の違いの原因となっている。因みに、同様に国家の歳入を原油に依存しているクウェートは65ドル/Bであり、サウジアラビアの財政均衡油価は極端に高い。