2024年10月1日(火)

BBC News

2024年10月1日

イスラエル軍は1日未明、レバノン南部で同国のイスラム教シーア派組織ヒズボラに対する「限定的、局地的、かつ標的を絞った」地上作戦を開始したと発表した。レバノンでは30日夜、首都ベイルートなどでイスラエルによる空からの攻撃があった。

イスラエル国防軍(IDF)はX(旧ツイッター)に投稿した声明で、「レバノン南部のヒズボラ・テロリストの標的とインフラに対する正確なインテリジェンスに基づき」、地上作戦を開始したと説明。国境近くに位置する標的は、「イスラエルの地域社会に対する差し迫った脅威」だと述べた。

また、「イスラエル空軍とイスラエル国防軍の砲兵隊は、この地域の軍事目標に対する正確な攻撃で地上部隊を支援している」と付け加えた。

イスラエル軍に関しては、大規模な侵攻を近く開始するとの報道が出ていたが、米政府高官は30日夜の時点でコメントを避けていた。

IDFが地上作戦開始を発表した後も、米ホワイトハウスはコメントを出していない。

アメリカ政府関係者によると、イスラエルは作戦開始に先立ち、アメリカ政府に地上侵攻の意向を通告していたとされる。

BBCがアメリカで連携するCBSニュースは米当局者の話として、今回の作戦は9月30日にも始まる可能性があったと伝えた。

米紙ニューヨーク・タイムズも、イスラエルのコマンド部隊がすでにレバノン領内に短期間侵入し、広域侵攻の可能性に備えていると報じていた。

国境から10キロと離れていないレバノンの、キリスト教徒が多いジェイデット・マルヤヨウン村の村長は30日、ロイター通信の取材に対し、村民2人がイスラエル軍からと思われる電話を受け取り、ただちに避難するよう言われたと話した。

イスラエルのヨアヴ・ガラント国防相は30日、地上作戦の準備が整っていることを示唆し、レバノン国境付近の部隊に対し、イスラエルはヒズボラを標的に「空、海、陸からの」戦力を使用する用意があると語っていた。

ガラント国防相は短い動画の中で、ヒズボラとの交戦で避難しているイスラエル北部の住民を帰還させるため、イスラエル軍はあらゆる「手段を用いる」と述べた。

また、27日にベイルートでヒズボラの指導者ハッサン・ナスララ師を「排除」したことは「非常に重要な一歩だが、それがすべてではない」と述べた。

一方、ヒズボラのナンバー2とされるナイム・カセム師は、イスラエルの地上攻撃に備える準備はできていると表明。これまでのイスラエルに対するヒズボラの攻撃は「最低限」のものだとし、戦闘は長期化する可能性があると付け加えた。

首都ベイルートに空爆、警告から30分で攻撃

イスラエル軍は30日夜、ベイルート南郊の3カ所の地区から「直ちに」避難するよう住民に警告した。

IDFのアビチャイ・アドレー・アラビア語報道官はソーシャルメディアで住民に対し、「あなた方はテロリストであるヒズボラの利権や施設の近くにいる。IDFは武力で対応するつもりだ」と説明していた。

住民への警告が送られたダヒエは、ヒズボラが拠点としている地域だという。

ベイルートで取材しているナフィセフ・コナヴァルド記者によると、この警告から30分もたたないうちに、攻撃地点から遠く離れた場所でも大きな爆音が聞こえたという。

イスラエルの空爆が強化されるなか、すでに数千人がダヒエから避難しているが、十分な避難所がないため、多くの人々が路上で寝ていると、コナヴァルド記者は伝えた。

国際社会からは自制求める声

イスラエルとヒズボラの戦闘をめぐっては、国際的にも自制を求める声が上がっており、国連や欧州連合(EU)が地上侵攻を避けるようイスラエルに求めていた。

EU加盟国は30日、国連安全保障理事会の緊急会合を求めた。EUのジョゼップ・ボレル外交政策委員長は、「これ以上の軍事介入は状況を劇的に悪化させるものであり、避けなければならない」と述べた。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長も報道官を通じ、イスラエルによるレバノンへの「いかなる地上侵攻も望まない」と述べた。

ジョー・バイデン米大統領は30日、「今すぐ停戦すべきだ」と述べた。

バイデン大統領は、イスラエルの越境侵攻計画を容認するかとの質問に対し、「私は、皆さんが知っている以上に状況を認識しており、停戦に賛成だ」と答えた。

一方、イギリスのデイヴィッド・ラミー外相は記者団に対し、「最善の方法は即時停戦だ」と述べた。

ラミー外相はまた、イギリス人とその扶養家族のレバノン出国を支援するため、民間機をチャーターしたと発表した。

出国支援の対象はイギリス人とその配偶者またはパートナー、18歳未満の子供で、弱い立場の人々が優先される。チャーター機は10月2日にベイルートを出発する予定だという。

中東にとってもうひとつの極めて重要で危険な瞬間

アナ・フォスター(ベイルート)

現地時間1日午前2時過ぎ、ついにイスラエル軍がレバノンでの地上作戦を発表した。

イスラエル国防省の発表では、この作戦は「限定的」で「局地的」なものだというが、この戦争がそんな単純なものになる保証はどこにもない。

1週間以上にわたるイスラエルの激しい空爆の後、ヒズボラの軍事インフラがまだどの程度残っているのか、今のところ判断するのは難しい。

もし、イランの支援を受けるヒズボラに十分な火力が残っていれば、国境から遠く離れたイスラエルの都市まで攻撃する可能性がある。

また、イエメンのフーシ派やシリアやイラクで支援している民兵組織など、他のイランの代理勢力が、イスラエルの標的や近隣の米軍基地のような身近な場所を攻撃しようとするかもしれない。

イラン自身も、4月に行ったような再攻撃を試みるかもしれない。これらすべての対応が起こる可能性もあるし、まったく起こらない可能性もある。

現時点では答えよりも疑問の方が多いが、ここ数週間、多くの問題を目の当たりにしてきた中東地域にとって、またしても極めて重要で危険な瞬間がやって来たことは確かだ。

(英語記事 Israel tells US it plans to launch limited ground incursion into Lebanon/ Live Page

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c870yxqd2xxo


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