残暑が続き、今月も東京電力、関西電力管内などにおいて電力供給量が不足し、他の電力会社から送電の融通を受ける事態になりました。この夏にはいくつかの電力会社が供給力不足に直面しました。
電力融通は、自然災害による発電所被災時などに以前から実施されていましたが、最近は、電力需要が高まる冬季、夏季の融通の頻度が多くなってきました。
一方、日本の電力需要量は、この10年間波を打ちながら減少しています。節電努力に加え、電力の7割を消費する産業などの非家庭部門が必ずしも好調ではないからです。
需要が減少している中で、電力が不足するのは不思議ですが、理由は安定的に供給できる発電設備が徐々に減少しているためです。
2012年に太陽光発電設備などの再生可能エネルギー(再エネ)導入支援に固定価格買取制度(FIT)が導入されました。制度の支援を受けた太陽光発電設備などは大きく増えましたが、自然条件次第の再エネ設備はいつも発電できる訳ではありません。
たとえば日没後太陽光設備が発電できない時に、運転できる発電設備が減ってきています。電力市場自由化が原因です。
16年の電力市場の完全自由化の目的のひとつは、「安定供給の確保」でした。電力供給は安定化するはずでしたが、実際には、電力供給が不足し不安定化する地域がでてきました。
これから電力需要量は、電気自動車(EV)、ヒートポンプなどの電化の進展、生成AIの利用を支えるデータセンター新設、半導体製造により増加すると思われます。
そうなると停電の不安がさらに広がりそうです。対策はあるのでしょうか。
電気が足りない2つのケース
2種類の「電気が足りない」があります。一つは、「同時同量」と呼ばれる原則が崩れる時です。
電気は必要な時に、需要と同じ量を発電する必要があります。たとえば1000ワット(W)のエアコンのスイッチを入れると、1000W(1kW)の電気が必要になります。仮に100万世帯が同時にエアコンを使い始めると、100万kWの電気が新たに必要になります。よく言われる原子力発電1基分の設備容量に相当する電気です。
もし、この時に余っている100万kW以上の発電設備がなければ「同時同量」を満たせず、電気が不足し停電します。電気の需要があまりない時、たとえば深夜に電気を貯めておき、需要が高い時に使えば良いと思いますが、電気は貯めると高くなります。モバイルバッテリーの能力と価格を考えれば、蓄電池の値段が高いのは分かると思います。