2024年10月10日(木)

孤独・孤立社会の果て 誰もが当事者になる時代

2024年9月30日

 日本では今、孤独・孤立が人々に身近なものとして受け止められている。現代社会でこの問題が顕在化した背景にはかつて日本社会を支えていた「血縁」「地縁」「会社縁」の揺らぎが関係している。孤独・孤立問題がどのように捉えられてきたか、その変化は三つの時代区分から整理ができる。

(YOSUKE WADA)

 第一期は、高度経済成長を通じ日本社会に大きな構造変動が生じた1970年代初頭である。高度経済成長を経て、日本社会は働く父親と家庭を守る母親がつくる核家族が「標準」のサラリーマン社会へと変貌を遂げた。他方、都市への人口の集中は、これまで地方に存在していた「地縁」を解体し、地方に残された高齢世帯を孤立させた。

 70年代には、「一人暮らしの高齢者」の事故を扱う新聞記事が増え、厚生省や全国社会福祉協議会も実態調査を行っている。しかし、当時の孤独・孤立問題は、高齢者福祉の問題に収斂され、社会全体で幅広い注目を集めることはなかった。

 次に国民の関心が高まったのは、阪神・淡路大震災が発生した95年である。震災後、多くの被災者が仮設住宅に入居した。だが、仮設住宅の入居は、もともとあった地域のつながりを考慮せずに行われてしまったため、域内では「孤立死」が頻発した。ただ、孤立そのものは災害時の特殊事例と見なされ、この時もあまり大きな注目を集めなかった。

 第三期の90年代後半から2000年代に入ると、日本の戦後体制に本格的な揺らぎが生じてくる。終身雇用の企業体制も、皆婚社会と言われた婚姻状況も、徐々に過去のものとなってゆく。

 これまで日本に住む多くの人を取り込んできた「家族」「会社」というつながりが大きく揺らぎ、人々の間にどこにも根を張れないという不安が蔓延した。メディアでも孤独・孤立に関する報道が散見されるようになる。そこに新型コロナウイルスによる自粛が追い打ちをかけ、孤独・孤立問題は高齢者だけではない日本社会全体の問題として一層の注目を集めるようになった。


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