2024年12月4日(水)

孤独・孤立社会の果て 誰もが当事者になる時代

2024年9月20日

 「死にたい──。初めてBONDに相談した時、その言葉しか出てきませんでした」

新宿ゴールデン街近くをパトロールするBONDのメンバー。その活動に密着した(WEDGE)

 ぽつりぽつりと言葉を紡ぐ21歳の女の子。彼女は、NPO法人「BONDプロジェクト(以下、BOND)」に保護され、都内某所のシェルターに入居している。BONDは望まない性行為や妊娠、家族からの虐待、パートナーからのDVといった生きづらさを抱える10代、20代の女の子を支援する団体だ。

 地方出身の彼女は専門学校への進学のため19歳で上京したが、親からの金銭援助はなく、学費が支払えず1年で退学した。生活費も賄っていた奨学金が退学で停止したため、生活は困窮。親との関係性から家に帰ることもできなかった。

 人に何かを伝えることが苦手という彼女は働くこともままならず、生活ができなくなり、自らBONDに連絡をした。その時の言葉が冒頭の「死にたい」だった。

 「当時は、人に自分や家族のことを話すのが怖かった。何より、相談したことが親にバレたらどうしようという不安がありました」

 彼女のように、親との関係にトラウマや悩みを抱えている未成年者は、親への情報提供を恐れて、学校や児童相談所に不信感を抱き、相談できない子も少なくない。

 実際、BONDが2023年4月~24年3月に実施した5508件の電話相談や面談のうち、女の子が抱える問題の背景に「家族」がある場合が5141件にも上っている。

 BONDでは年間3万件以上のLINE相談などを受ける傍ら、新宿、渋谷、池袋など、夜の繁華街に出て、リスクを抱える女の子がいないかのパトロールも行っている。

歌舞伎町でパトロールを行うサクラさん(写真右)。歌舞伎町には、学校帰りの子やティックトックを撮影しに来た子など、さまざまな女の子たちがいた

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