2024年9月27日(金)

孤独・孤立社会の果て 誰もが当事者になる時代

2024年9月20日

「早くつながっていれば」
相談の入り口となるために

 「眠らない街」新宿・歌舞伎町。8月のある夜、小誌取材班はスタッフ4人とともにBONDのパトロールに同行した。

 「立ちんぼ」がいることで有名な大久保公園周辺にある閉店後の薬局の入り口にボサボサの赤髪をした女の子が座り込んでいた。BONDのスタッフであるレイアさん(28歳)が駆け寄り、声をかける。

 「こんばんは。何してるの?」

 「ホスクラの開店待ちだよ。お姉さんもホスト通ってるの?」

 聞けば家出中の19歳。半年前からホストクラブに通い、未払い金もある。レイアさんは彼女の話を親身に聞き、最後に「何か困ったらここに連絡してね」とBONDの説明と連絡先が載ったカードを渡した。

 パトロールは1日で50人ほどに声をかけ、30~40人にカードを渡す。この日は飲食店の並ぶ大通りだけでなく、ホテル街や裏路地、Wi−Fiが飛んでいる駐車場など、ハイリスクな子が多いと思われるエリアを重点的に見て回った。パトロールにマニュアルはない。スタッフ数人でまとまって動きながら、気になった女の子に声をかけていく。

歌舞伎町で女の子に声をかけるレイアさん(写真右)。女の子が心を開きやすいように服装やメイクを街に合わせて変えている

 「お風呂に入っていないだろうなという臭いがする子もいますし、あてもなくゆっくりと彷徨うように歩いている子も気になります。他にも、服装やメイクが季節に合っていない子は、虐待を受けていてずっと家から出られなかったのかなと感じたり、目の焦点が合っていない子は、OD(オーバードーズの略。医薬品を決められた用量を超えて過剰摂取することを指す。特に、かぜ薬や咳止め薬などの市販薬を、本来の効能効果ではなく、精神への作用を目的として大量に服用する若者が増えている)してるかもしれないと思って声をかけています」(レイアさん)

 女の子たちの状況に寄り添い、支援につなげているレイアさんだが、かつては自身もBONDに助けを求めた一人だった。

 「短大の保育科の授業で、初めて自分が『虐待』されていたことを知りました。母親は一番や100点を取らないと褒めてくれず、それ以外はネグレクト状態で暴力も受けた。自分が虐待されていたんだと自覚したら、途端に体調が悪くなって、トラウマを思い出すような授業もつらくて出られなくなりました」と当時を振り返る。心身ともに不安定な日々の中、彼女の居場所はツイッター(現:X)になり、そこで目にしたリストカットやODといった自傷行為をするようになった。


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