2024年10月4日(金)

BBC News

2024年10月4日

トム・ゲイガン BBCニュース

11月5日のアメリカ大統領選に向けて、共和党候補のドナルド・トランプ前大統領と、民主党候補のカマラ・ハリス副大統領がそれぞれ掲げる政策の、要点を比較する。

経済

ハリス副大統領は、勤労世帯のために食料品や住宅の価格を引き下げることが、就任初日からの優先課題だと話している。

災害やパンデミックなどに便乗した食料品の不当値上げを禁止し、マイホームを初めて購入する人を支援し、住宅供給拡大につながる施策を実施する方針という。

トランプ前大統領は、「インフレを終わらせ、アメリカを再び支払い可能にする」と述べている。

前大統領は、金利引き下げを公約しているが、これについて大統領には決定権がない。住宅不足については、不法移民を強制退去させれば、問題は和らぐとしている。

人工妊娠中絶

ハリス候補は、妊娠の人工中絶を女性が選ぶ権利を、自らの選挙戦の重要テーマにしている。個人の生殖に関する権利を全国的に保障するため、立法措置の重要性を主張し続けている。

トランプ候補はこのところ、一貫性のある主張がなかなかできずにいる。

自分が大統領として指名した最高裁判事3人は、中絶手術を受ける権利を全米に保障した1973年の重要判例「ロー対ウェイド」判決を覆すにあたり、不可欠な役割を果たした。

移民

ハリス候補は副大統領として、アメリカ南側の国境に移民希望者が押し寄せる危機の根本的な原因に取り組む役割を担ってきた。アメリカを目指す人の流れを食い止めるため、中南米などへの数十億ドル規模の民間投資実現を支援してきた。

メキシコからアメリカへ入る人数は、2023年末には記録的な数に達したものの、それ以降は減少している。今回の選挙戦でハリス候補は、不法移民を取り締まる姿勢をこれまでより強く打ち出し、自分はかつてカリフォルニア州の司法長官として密入国あっせん組織を摘発したのだと強調している。

トランプ候補は、国境の壁建設を完成させ、取り締まりを強化することで国境を封鎖すると公約している。ただし、国境警備強化や難民申請の条件厳格化など、不法移民問題の抜本的対策として民主党と共和党が超党派でいったんまとめた法案について、共和党の連邦議員たちに反対するよう促した。

トランプ候補はさらに、アメリカ史上かつてない規模で不法移民を強制退去させると約束している。複数の専門家はBBCに、この公約の実現にはさまざまな法的問題が伴うと話している。

税金

ハリス候補は、大企業や年収40万ドル(約5800万円)以上のアメリカ人に対する税金を引き上げたいとしている。その一方で、子育て中の家庭に対する税控除拡大を含め、一般家庭の税負担を引き下げる狙いの施策を複数発表している。

トランプ候補は、総額数兆ドル分に相当する複数の減税措置を発表している。これには、大統領として2017年に実施した、主に富裕層が恩恵を受けた減税策の延長も含まれる。減税分の財源は、経済成長の拡大と輸入品への関税引き上げで充てる方針という。

複数のエコノミストは両候補のどちらの税金対策も、膨れ上がるアメリカの財政赤字をさらに拡大させるものの、トランプ候補の施策の方が大幅な赤字拡大につながると指摘している。

外交政策

ハリス候補は、「必要な限り」ウクライナを支えると誓っている。もし自分が大統領に選ばれれば、「21世紀をめぐる競争」には中国ではなくアメリカが確実に勝つようにするとも公約している。

ハリス候補はかねて、イスラエルとパレスチナが共存する「2国家解決」を支持してきたほか、ガザ地区での戦争終結を呼びかけてきた。

トランプ候補の外交政策は孤立主義的なもので、世界各地の紛争からアメリカが手を引くことを求めている。

トランプ候補は、自分が当選すれば24時間以内にウクライナでの戦争を終わらせると主張。これは、ロシアとの協議による停戦合意で実現するとしている。これについて民主党側は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を勢いづけることになると批判している。

トランプ候補は、イスラエルを強力に支持するという姿勢を強硬に示しているものの、ガザでの戦争を実際にどうやって終わらせるかについては、ほとんど発言していない。

貿易

ハリス候補は、トランプ候補が輸入品に幅広く関税をかけるという公約を批判し、そのようなことをすれば、全米の勤労世帯が一世帯ごと年間4000ドルを負担することになる課税措置に等しいと主張している。輸入品への課税については、ハリス候補は項目別の細かい対応を予定しているとみられる。

トランプ候補は、追加関税を重要な選挙公約の一つに掲げている。ほとんどの輸入品に対する一律関税の税率を10~20%としているほか、中国からの輸入品には大幅に高い税率を課す姿勢を示している。

気候

ハリス候補は副大統領として、インフレ抑制法の成立に協力した。同法を通じて、再生エネルギー普及と電気自動車への税控除・払い戻し事業などに数億ドルの予算が割り当てられた。

ただし、シェールオイル・ガス採掘で用いるフラッキング(水圧破砕法)への反対は取りやめている。フラッキングは環境汚染や地盤への悪影響が懸念されると、環境保護派は批判している。

トランプ候補は大統領だった当時、何百もの環境保護策を撤廃した。この一環として、発電所や車両から出る温室効果ガス排出量の制限も撤廃した。

今回の大統領選では、北極圏での石油・ガス採掘を拡大すると約束するほか、電気自動車も批判した。

医療

ハリス候補が副大統領を務める現政権は、処方薬の薬価を引き下げ、インスリンの患者自己負担に月額35ドルの支払い上限を設定した。

トランプ候補はかつて大統領として、バラク・オバマ政権(民主党)が導入した医療費負担適正化法(通称オバマケア)を廃止しようとした。アメリカではオバマケアによって医療保険の適用が受けられる人が数百万人増えた。オバマケアについてトランプ候補は、撤廃するつもりはないと述べている。

トランプ候補は、公費負担による不妊治療を認めるべきだと主張しているが、これは共和党の連邦議員たちに反対される可能性がある。

犯罪

ハリス候補は、自分は検察官として長年の経験を持つのに対して、トランプ候補は重罪34件で有罪判決を受けていることを強調し、その違いを浮き彫りにしようとしてきた。

トランプ候補は、麻薬カルテルやギャング犯罪を撲滅すると公約。民主党が統治する都市は深刻な犯罪都市と化していると主張し、そうした都市を再建するとしている。

ハリス候補は、銃暴力の防止を重要な選挙公約にしている。ハリス氏とティム・ウォルズ副大統領候補は共に、銃を所持していることを公表しており、そのうえで銃規制の強化を訴えている。

ただし、銃購入時の身元確認強化や殺傷力の高い攻撃用銃器(アサルト・ウェポン)の禁止を実現するには、連邦議会の支持が必要となる。

トランプ候補は、武器保有の権利を保障する憲法修正第2条を確固として保護してきた。今年5月に全米ライフル協会(NRA)を前に演説した際には、自分こそNRAの一番の友人だと力説した。

(英語記事 What are Harris and Trump's policies?

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c1k7p74zlnwo


新着記事

»もっと見る