イスラエルで7日、パレスチナのイスラム組織ハマスがちょうど1年前にイスラエルで行った集団殺害と拉致の犠牲者らを追悼する式典が開かれた。この襲撃をきっかけに始まったパレスチナ・ガザ地区とレバノンにおける戦闘は、なおも続いている。
ハマスによる昨年10月7日のイスラエル急襲では約1200人が殺害され、251人が人質に取られた。1年がたち、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、こうした攻撃が二度と起こらないようにすると宣言。イスラエル軍が中東地域の「安全保障の現実を変えている」と述べた。
ハマスが運営するガザ保健当局によると、昨年10月7日以降、イスラエルのガザ攻撃で4万2000人近くが殺害された。
イスラエルは、追悼式典が開かれたこの日も、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラから発射されたロケット弾100発以上と、イエメンの反政府武装組織フーシ派とガザのハマスから発射されたロケット弾を迎撃したとした。
午前6時29分に黙とう
ハマスの襲撃時にノヴァ音楽フェスティバルが開かれていた場所には、そこで殺害された数百人の家族と、人質に取られた数十人の家族が、この日最初の追悼行事のために集まった。
フェスティバルで最後に演奏された曲が流され、愛する人の写真を手にした家族らが聴き入った。襲撃が始まった午前6時29分には、イツハク・ヘルツォグ大統領の呼びかけで1分間の黙とうがささげられた。
ハマス戦闘員らに襲撃された近隣のコミュニティーでも、小規模な追悼行事が開催された。
ネタニヤフ首相は、犠牲者らのために作られたエルサレムの「鉄の剣」記念碑を訪問。「犠牲者、人質を忘れない」ためとして、ろうそくに火を灯した。
テルアヴィヴ最大の公園では、政府の公式追悼式典に代わる「遺族追悼式典」と銘打った行事が開かれ、犠牲者の家族らが集まった。スクリーンに犠牲者たちの映像が映し出されるなか、人気歌手らが感動的な演奏を披露。ステージには、ノヴァ音楽フェスティバルの襲撃で焼け焦げた車や、攻撃されたキブツ(農業共同体)ベエリに残されていた子ども用の自転車やブランコなどが置かれた。
イスラエル国外でも、追悼などの動きがあった。
アメリカのジョー・バイデン大統領は、世界の他の指導者らと同様、1年前のハマスによる襲撃を「言語に絶する残虐行為」だったと非難。その後の戦争について、「あまりにも多くの民間人が、あまりにも多くの苦しみを味わった」と述べた。
オーストラリア、南アフリカ、ドイツ、アメリカなどでは追悼集会が開かれ、人々が集まった。
イギリスでは、キア・スターマー首相が議会下院で、イスラエルの自衛権を支持すると述べた。同時に、現在の危機は軍事では解決できないと主張し、すべての側に「一歩引く」よう訴えた。
追悼行事が開かれるなかも、中東地域の紛争は激化が続いた。
イスラエル軍は、ヒズボラがレバノンから国境越しにロケット弾130発以上を発射したと発表。ほとんどは撃ち落としたが、一部がイスラエル北部のハイファとティベリアに着弾したとした。
これに先立ち、ハマスもガザからテルアヴィヴに向けてロケット弾を発射した。イスラエル軍によると、イエメンからもイスラエルに向けて弾道ミサイルが発射されたが、同軍が迎撃したという。
イスラエルはこの日、レバノンで空爆と地上侵攻を行った。
イスラエル軍は、ヒズボラに対する作戦を拡大していると説明。レバノン南部の住民に対し、アワリ川以南の海や川で小型船を使わないよう警告した。
レバノン当局によると、3週間にわたるイスラエルによる激しい攻撃やその他の攻撃で、レバノンでは1400人以上が殺害され、約120万人が避難を強いられている。
レバノンで大きな力をもつヒズボラは、指導者や軍事部門の最高幹部らのほとんどが殺害されるなど、ここ数週間で壊滅的な打撃を受けているが、挑戦的な姿勢を崩していない。7日には、「イスラエルの侵略に対する私たちの抵抗力に(中略)自信をもっている」と強調した。
ヒズボラをテロ組織に指定しているイスラエル政府は、レバノン国境付近の自宅から避難している何万人もの人々が安全に戻れるようにすると約束している。
ヒズボラは、ハマスがイスラエル南部を襲撃した翌日の昨年10月8日に、イスラエル北部へのロケット弾発射を開始。以来、イスラエルとヒズボラの対立は着実にエスカレートしている。
ヒズボラとハマスはいずれもイランから支援を受けており、ヒズボラはパレスチナ人に連帯を示すために行動しているとしている。
(英語記事 Israel marks year since Hamas attack as fighting rages on multiple fronts)