2024年11月21日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年10月8日

 エコノミスト誌9月21日号の解説記事が、中国の経済的影響力が強まる中、米国が東南アジア諸国との関係を強化するためには、米国企業による投資に加え、世界最大の市場である米へのアクセスを高めなければ、米国の経済的影響力は益々低下するだろう、と述べている。要旨は次の通り。

(PeterHermesFurian/Dilok Klaisataporn/d1sk/gettyimages)

 東南アジアへの米国の働きかけは、米国市場への新たなアクセスを提供することなく、経済的影響力を拡大しようとする努力の一環である。そのために、貿易よりも投資を強調し、第二次世界大戦以降のこの地域の経済成長における米国の民間部門が果たした役割を強調している。

 米国政府高官の発言には真実が含まれている。米国は、東南アジアにおいて、少なくとも中国の2倍の投資を行ってきた。

 現在、この地域は地政学的競争の中心地である。しかし、これらの投資の大部分は過去に行われたものだ。シドニーにあるシンクタンク、Lowy Instituteの新しい報告書によると、過去10年間で中国は東南アジアに2180億ドルを投資したが、米国は1560億ドルしか投資していない。

 現地のビジネス・リーダーや政治家にとって重要なのは利益である。投資によってもたらされる影響力は、数十年が経過するにつれて薄れていってしまう。将来的リターンの方が重要であり、それについては中国が優位に立っている。

 かつて、米国は(投資の)量ではなく質で勝負することを望んでいた。米国は先端製造業や半導体など、アジアの産業をバリューチェーンの上流に押し上げるプロジェクトに投資した。しかし、かつて衣料品などを中心に投資を行っていた中国は、今や品質でも競争力をつけてきている。

 両国の企業は、AIブームを支えるデータセンターに投資している。中国だけが電気自動車のサプライチェーンに東南アジアの企業を取り込んでおり、また東南アジアの重要鉱物の加工に投資している。そして、それは電気自動車用のバッテリーに使われている。

 だからといって、米国企業が中国の影響力を低下させるのに役立たないわけではない。投資に意味がある場合には、中国資金に代わる選択肢を提供することができる。

 両者間の競争は、借り手にとってより良い条件をもたらすことができる。問題は、米国企業がリスクの高いプロジェクトに投資することにほとんど興味を示さないことだ。


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